2002.06.27

【ISH速報】 喫煙者の外来血圧は“過小評価”か、24時間血圧との比較結果が発表

 喫煙すると血圧が上昇するが、喫煙者の外来血圧は非喫煙者よりむしろ低いことが知られている。この「矛盾」の解明に挑んだのが、デンマークHolbaek病院のK. S. Kristensen氏ら。6月26日のポスターセッションで、喫煙者、非喫煙者の外来血圧と24時間血圧との比較結果を発表した。

 Kristensen氏らが立てた仮説は、「喫煙者ではたばこを吸う日中の血圧が総じてみると非喫煙者より高く、外来血圧ではその違いが検出できないが、24時間血圧を測定すれば日内変動の違いが明らかになる」というもの。この仮説を検証するために必要な被験者数は約600人で、「うち喫煙者が160人以上含まれている必要があるとの計算になった」(Kristensen氏)。


 ところが、必要症例数が集まる前に、ISH学会の発表登録期限が来てしまった。そこで、その時点までに集まっていた437症例から、喫煙者のうちヘビースモーカー(1日10本以上)を抽出して仮解析したところ、仮説を支持する結果が得られた。外来血圧は非喫煙者(315人)で149.7/91.2mmHg、ヘビースモーカー(59人)で148.7/92.4mmHgと変わらない。ところが、日中血圧は非喫煙者が142.5/87.5mmHg、ヘビースモーカーが147.5/90.8mmHgとなり、「通常は外来血圧より低くなる日中血圧が、ヘビースモーカーではほとんど下がらなかった」(Kristensen氏)のだ。

 この結果を受け、Kristensen氏は「喫煙者の場合、外来血圧だけでは血圧を過小評価してしまう。喫煙者には全例、24時間血圧を測定すべき」と結論付けた発表抄録を執筆。演題は無事採択され、ISH学会での発表が決まった。

 事態が急変したのはその後だ。予定症例数が集まってから、再度解析を行ったところ、結果が変わってしまったのだ。非喫煙者(414人)の外来血圧は平均150.8/91.9mmmHg、喫煙者(166人)では148.5/91.6mmHgで両者に差はない。そして、日中血圧の平均値も、非喫煙者で142.9/87.6mmHg、喫煙者で144.8/89.1mmHgと、有意差がなくなってしまった。

 外来血圧と日中血圧の差は、非喫煙者で7.9/4.3mmHg、喫煙者で3.7/2.5mmHgとなり、「統計学的には有意な差だが臨床的にはこの程度の違いは意味がない」とKristensen氏。ヘビースモーカーだけで非喫煙者と比較した場合も、結果は同じだった。唯一差があったのは心拍数で、喫煙者で有意に多かったという。

 抄録を執筆した時点までの症例と、その後の症例とには特に患者背景の違いは認められず、「最初にみられた日中血圧の違いは、やはり症例数が少なかったために起こったエラーだと思う」とKristensen氏は振り返る。「この結果からは『喫煙者全例への24時間血圧測定』を推奨する根拠は得られない」と肩を落とすKristensen氏だが、必要症例数を特に定めずに症例を積み重ね、有意差が出た時点で発表する臨床研究が少なくないなか、同氏の誠実な姿勢は評価されるべきだろう。

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