2002.06.27

【ISH速報】 血圧による臓器障害を減塩が予防、降圧薬の作用を強める効果も−会長講演より

 6月26日のプレナリー(必須)セッション「ISH Plenary Session」では、ISHの今期会長を務めるフランスLapeyronie病院内科高血圧部門のAlbert Mimran氏が登壇。会長講演で、減塩に関して現時点までに得られているエビデンスを概説し、高血圧患者に対する食事療法の有用性を訴えた。

 ナトリウムは生きていく上で欠かせないミネラルの一つだが、1日摂取量は塩化ナトリウム換算で100mmol(約6g)程度で十分だとされる。日本人の場合、平均食塩摂取量は1日12.3g(厚生労働省「平成12年国民栄養調査」)で、多くの人が食塩を取り過ぎている計算になる。

 食塩などナトリウムの摂取量に応じて血圧が上がる「ナトリウム感受性」は、正常血圧者の20%、高血圧患者の35〜50%にみられる。黒人や高齢者はナトリウム感受性が比較的高いことが知られている。また、ナトリウムに感受性がある人では、夜間血圧が高いほか、脂質代謝や糖代謝、腎機能などもナトリウム非感受性の人より悪い傾向があるという。

 こうした点を解説した後、Mimran氏は「食塩の過剰摂取は直接血圧を上げるだけでなく、血圧による臓器障害を促進する」と指摘。その根拠として、Mimran氏らが健康なフランス人男女836人を対象に実施した研究結果を挙げた(Am. J. Hypertens.;15,222,2002)。被験者の年齢は18〜70歳(平均41歳)で、65%に未治療かつ合併症のない高血圧(140/90mmHg以上)がある。高度の肥満(体格指数=BMIが35以上)がある人は被験者に含まれていない。

 Mimran氏らはまず、被験者の食塩摂取量を24時間排泄ナトリウム量で評価し、多い順に5グループに分けて血圧を比較した。すると、最も摂取量が多かったグループでのみ、血圧の上昇が認められた。このことは、「相当量の食塩を摂取しない限り血圧に悪影響は出ない」ことを示唆している。

 ところが、左室肥大(心臓障害)や微量アルブミン排泄(腎臓障害)を比べると、食塩摂取量が増えるほどこうした臓器障害が直線的に増加することがわかった。この傾向は、高血圧の人だけでなく、血圧が正常範囲の人でも同様にみられた。つまり、高血圧の人だけでなく正常血圧の人でも、「臓器障害を防ぐためには、食塩摂取量は少なければ少ないほど良い」というわけだ。

 Mimran氏は「食塩制限による血圧低下効果自体はごく軽微(modest)で、1日100mmol(約6g)減塩しても5/2mmHg下がる程度。しかし、臓器障害を防ぐ効果は、血圧値から予想されるよりもはるかに大きい」と強調。さらに、降圧薬、なかでもアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬の効果が食塩制限下で増強するとのデータを例に挙げ、「医療経済的な観点からも利点は大きい」と述べた。

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