2002.06.26

【ISH速報】 正常範囲内でも血圧が認知機能に影響、閉経後女性で判明

 高血圧の人では痴呆の発症率が高いことが知られているが、血圧がたとえ正常範囲内に留まっていても、収縮期血圧が高いほど認知機能が低いことが明らかになった。正常血圧の閉経後女性22人を対象とした研究結果で、東京大学保健管理センター助手の田口理恵氏らが、6月25日のポスターセッションで発表した。

 痴呆の患者数には男女差があり、男性よりも女性が多い。これは、女性の方が相対的に長生きするためだと考えられてきた。ところが、年齢で補正した後も、やはり女性の方が痴呆を発症しやすいことが最近になって判明。女性の痴呆発症メカニズムに大きな注目が集まっている。

 しかし、これまで行われてきた研究の多くは、男性患者を対象としたもの。また、「高血圧」(140/90mmHg以上)にならない程度の血圧が、痴呆発症に影響するか否かも明らかではなかった。そこで田口氏らは、正常血圧の閉経後女性22人を対象に、正常範囲内の血圧が認知機能に影響するかどうかを調べた。被験者の平均年齢は57.7歳と、この種の研究では比較的若い。平均血圧は120.5/76.1mmHg。

 田口氏らは被験者に、記憶力や注意力などの認知機能を総合的に調べる「WAIS-R」テストを受けてもらい、そのスコアと血圧などとの関連を検討した。「WAIS-R」テストは8項目から構成されており、項目ごとに認知に関わる様々な機能が評価できるようになっている。

 その結果、テスト項目のうち符号テスト(Digit Symbol)の点数と、収縮期血圧値との間に、負の相関があることがわかった。年齢や教育レベルなど、テスト成績に影響を与え得る因子で補正した後も、収縮期血圧値が高い人ほど符号テストの点数が低くなった。体格指数(BMI)や総コレステロール値、空腹時血糖値などを含めて多変量解析を行っても、やはり収縮期血圧値と符号テストの点数とには有意な相関が残った。

 符号テストは、1〜9の数字に、例えば1は□、2は▲といった符号をつけ、そのルール通りに符号をランダムに並んだ数字に当てはめるもの。認知機能のうち、精神活動と行動とを調和的に結び付ける「精神運動速度」(psychomotor speed)に関連する能力を反映するとされる。

 精神運動速度の低下が痴呆につながる「初期変化」を表しているのかは、「今回の研究だけではわからない」と田口氏は話す。しかし、従来は治療の対象にならない、血圧が正常範囲に留まっている人でも、血圧が高いほど認知機能の低下が認められた意義は大きい。高齢者の血圧をどこまで下げるべきかとの議論にも、影響を与えるデータとなりそうだ。

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