2002.06.20

脈波伝播速度、脈拍数に依存か

 動脈硬化の指標として近年注目を集めている脈波伝播速度(PWV)が、脈拍数に依存して変わる可能性があることがわかった。ペースメーカー装着者22人の協力を得て行った実験で、脈拍数を早く設定するほど、PWV値も大きくなったという。PWVの臨床的な意義を考慮する上で重要な指摘となりそうだ。この研究結果は、Hypertension誌6月号に掲載された。

 PWVは、血管が硬くなる、つまり動脈硬化が進展するほど、心臓からの拍動(脈波)が伝わる速度が速くなるとの原理を利用した動脈硬化の指標。加齢に伴い直線的に増加するとのデータが得られており、「血管年齢」を測る検査として人間ドックなどにも普及しつつある。保険点数は検査料(150点)と診断料(140点)を併せて290点が認められている。

 脈拍数は運動や心理状態によって変動し、薬剤によっても変わるため、脈拍数にPWV値が影響を受ければ検査値としての再現性や臨床的な意義にも疑問符が付いてしまう。そこで、フランスLyon市民病院のPierre Lantelme氏らは、ペースメーカー装着者22人に協力を要請。脈拍数を1分間に60〜100回の間で5段階に変動させて、PWV値が変わるかどうかを調べた。22人の平均年齢は77.8歳で、PWV値は頚動脈と大腿動脈の間を測定した。

 その結果、脈拍数が1分当たり70回を超えると、PWV値がほぼ直線的に増加することが判明。PWV値の増加量は、脈拍数の増分40回当たり1.36m/s(136cm/s)となった。各脈拍でのPWV値の再現性が高いことも確かめられた。一方、血圧は収縮期、拡張期のいずれも、脈拍数を変えてもほとんど変動しなかった。

 なお、脈拍数とPWVとの関連を調べる研究は以前にも行われており(Hypertension;38,949,2001)、よく似た実験条件で相反する結果が報告されている。ペースメーカー装着者11人の協力を得て行われた検討で、明確な相関は認められなかったという。ただしこの研究では、脈拍数の増加に伴う平均血圧の上昇が観察されており、この点もLantelme氏らの検討結果とは一致しない。

 従って、今回の結果だけで結論を導くわけにはいかないが、少なくともPWV値を解釈する上で「脈拍の影響を除外しても良い」とは言い切れなくなったことも事実だろう。Lantelme氏らは「臨床試験や患者の経過観察において、PWV値の変動を解釈する場合は、脈拍数でPWV値を補正することが不可欠ではないか」と指摘している。

 この論文のタイトルは、「Heart Rate: An Important Confounder of Pulse Wave Velocity Assessment」。アブストラクトは、こちらまで。

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