2002.06.13

転移性大腸癌への化学療法、「3剤併用」で奏効率60%に

 転移性大腸癌に対する有望な抗癌薬3剤を、全て組み合わせた一次治療(ファーストライン)で、約60%という高い奏効率が得られることがわかった。ギリシアで実施された第2相試験の結果で、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌6月1日号に掲載された。大腸癌に対する基本的な化学療法薬はフルオロウラシル(5-FU)で、それに塩酸イリノテカン(CPT-11)あるいは新規プラチナ製剤のオキサリプラチン(L-OHP)を組み合わせた2剤併用療法(関連トピックス参照)が近年検討されているが、これら3剤全てを併用する試みは初めて。

 研究グループは、L-OHP、CPT-11、5-FUの作用機序がそれぞれ異なることに着目。「早い時期に多数の抗癌剤の併用による強力的な治療を行えば、癌細胞の治療抵抗性を最小限に抑え、最大な治療効果を挙げられる」と考え、今回の臨床試験を実施した。

 対象は、1999年10月〜2001年4月の間に登録された31人の転移性大腸癌患者。患者の64%(20人)には肝転移、38%(12人)には肺転移、22%(7人)にはリンパ節転移があった。一方、71%(22人)の患者は手術切除を受け、45%(14人)の患者は術前補助療法として5-FUによる治療を受けたことがあったが、CPT-11やL-OHPによる治療歴を持つ患者はいなかった。

 治療スケジュールは2週間を1コースとするもので、まず第1日目にCPT-11を150mg、30分かけて静注。2日目にはL-OHPを65mg、2時間かけて静注した。5-FUはロイコボリン(LV)との組み合わせで第2、3日目に投与。まずLVを200mg注入した後に5-FU400mgを1回静注(ボーラス)で投与し、引き続き5-FU600mgを22時間かけて持続静注した(投与量はいずれも体表面積1m2当たり)。

 その結果、完全寛解率(CR)は6.5%(2人)、部分寛解率(PR)は51.6%(16人)で、両者を合わせた全体奏効率は58.1%(95%信頼区間:40.7〜75.4%)にも上った。転移病変でも同様な治療効果が得られ、肝臓、肺、リンパ節転移巣においては、奏効率がそれぞれ65%、75%と57%となった。奏効期間の中央値は11カ月で、病状が進行するまでの期間(TTP)の中央値は13カ月だった。

 有害事象に関しては、45%(14人)の患者にグレード3/4の好中球減少、32%(10人)の患者にグレード3/4の下痢が見られたほか、6%(2人)の患者にグレード3の感覚性神経障害が確認された。しかし、有害事象による死亡例はなかった。

 研究グループは、「L-OHP、CPT-11、5-FUの作用機序が異なるため、三剤それぞれの毒性がオーバーラップしないことがわかった」と指摘。より大規模な臨床試験で有用性を再確認する必要はあるものの、極めて高い奏効率が認められたこの三剤併用療法は、転移性大腸癌患者に新たな希望を持たせてくれそうだ。

 この論文のタイトルは、「Triplet Combination With Irinotecan Plus Oxaliplatin Plus Continuous-Infusion Fluorouracil and Leucovorin as First-Line Treatment in Metastatic Colorectal Cancer: A Multicenter Phase II Trial」。アブストラクトは、こちらまで。(張辛茹、医療ジャーナリスト)

■ 追記 ■
 論文の抄録と本文とで、数値が一部異なっていますが、記事では本文中の数値を用いました。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.5.23 切除不能大腸癌への化学療法、オキサリプラチンの有用性がついに米国でも実証

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