2002.06.11

【日本皮膚科学会速報】 「皮膚腫瘍の自然消退現象を治療に役立てるべき」、会頭講演より

 自然消退することがある皮膚腫瘍はなぜ消えるのか、ヒトにとって有益な現象なのか、それとも腫瘍にとって必要な現象なのか−−。今学会の会頭を務める熊本大学医学部皮膚科教授の小野友道氏は6月7日、「消える皮膚腫瘍」と題する会頭講演を日本皮膚科学会総会で行った。腫瘍が自然になくなってしまう機構が判明すれば、治療に役立てられる可能性が十分にあるだけに、注目を集めているテーマと言えよう。

 小野氏はまず基底細胞癌を取り上げ、自然消退する傾向が強いと説明。「腫瘍の研究は細胞の増殖という観点から通常なされる。しかし、基底細胞癌の発育速度が遅い理由を増殖機構だけでは説明できなかったため、失われる機構も存在するはずと考えられ、アポトーシスの概念が生まれた」と語った。皮膚科医特有の形態をきちんと観察する能力が、アポトーシスの発見につながったとの認識を示した。また、腫瘍間質へのアミロイド沈着もしばしば観察されることを踏まえ、アミロイドへの変化が原因で腫瘍が大きくならない可能性も指摘されていると述べた。

 メルケル細胞癌でも自然に腫瘍が消える症例が報告されるようになってきたが、その理由はまだよくわかっていないと指摘。自然消退例は日本からの報告が少なくなく、また、女性が圧倒的に多く、再発しにくいのが特徴だという。

 また、悪性黒色腫でも部分的に消退するケースがしばしば認められると紹介。これは生体の強い免疫反応に起因し、特にT細胞が重要な役割を果たしていると考えられている。しかし、この場合の消退は、予後不良の兆候とされており、こうした矛盾した現象はハモンド効果と呼ばれているという。

 小野氏は、このように消える皮膚腫瘍をいくつか例示した上で、「再発しない腫瘍はその機構が判明すれば、腫瘍治療に大きな貢献をもたらすだろう。しかし、再発するタイプは転移しやすく、予後も芳しくないのが現状」と語った。再発する理由として、免疫監視機構と抗腫瘍薬の限界があることを挙げ、これらに関する研究も治療方法の改善につながるとの考えを示した。

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