2002.06.10

「メディアが伝えた」学会発表研究、4分の1は3年後も論文化されず

 学術集会のなかでも医学・医療分野は、新聞や雑誌などのマスメディアで取り上げられる機会が多く、米国では学会発表研究が新聞の1面を飾ることも珍しくない。しかし、こうした「メディアが伝えた」研究の4分の1は、学会発表から3年たっても論文になっていないことがわかった。Journal of American Medical Association(JAMA)誌6月5日号に掲載された調査結果による。

 この調査を行ったのは、米国退役軍人医療センターのLisa M. Schwartz氏ら。米国では「学会で発表されたが論文にならない研究の比率」がしばしば取り沙汰されるが、Schwartz氏らは、メディアが取り上げた、つまり一般市民に広く情報が公開された発表研究が、どの程度の比率で論文化されているかに着目。1998年に米国で開催された五つの大規模学術集会を対象に、メディアで記事になった研究の「その後」を調べた。

 調査対象の学術集会は、国際エイズカンファレンス、米国心臓協会(AHA)、米国臨床癌学会(ASCO)、北米放射線協会、神経科学学会の五つ。発表研究数と採択率は順に7000件(90%)、1万2500件(25%)、2400件(40%)、7700件(35%)、1万5000件(100%)で、いずれの学術集会でもプレス・リリースの配布や学会期間中の記者会見が行われている。

 これらの学術集会に関するメディアの総記事数は252本。複数のメディアが記事にした研究もあるため、研究数としては総計147件となった。学会別にみると、国際エイズカンファレンスが53件と最も多く、AHAが43件、ASCOが14件、北米放射線協会が7件、神経科学学会が30件となる。研究の種類別では、非臨床研究(基礎研究)が16%、無作為化臨床研究が24%で、59%は観察研究だった。

 次にSchwartz氏らは、代表的な医学論文データベースであるメドラインを検索。必要に応じて発表者に連絡を取り、「メディアが取り上げた」研究が、3〜3.5年後にどれだけ論文になっているかを検討した。

 すると、こうした研究の半数は、メジャーな(当該分野におけるインパクト・ファクターの高い)論文誌で発表されており、4分の1はマイナーな(インパクト・ファクターの低い)論文誌に掲載されていた。しかし、残りの4分の1は、学会発表から3年以上過ぎても論文になっていないことがわかった。この比率は、解析対象を「1面を飾った」研究に絞っても変わらなかったという。

 この結果について研究グループは、メディア側に対して「取り上げるべき研究」を絞り込み、まだ予備的な結果である、基礎研究段階であるといった「研究の限界」についても伝えるべきと提言。同時に、学会主催側にも「プレス・リリースとして発表する研究を厳選すべき」と苦言を呈している。

 日本の学術集会では記者会見やプレス・リリースの配布はほとんど行われないが、欧米では、ある程度の規模の学術集会では記者発表の場が設けられるのが通例だ。プレス・リリースで取り上げられる発表研究は、当然ながら臨床的に重要な研究が大半で、実際に多くのメディアが記事にする。プレス・リリースそのものも、学会期間中、あるいは終了後に、学会のホームページで一般に公開されることが多い。

 しかし、学術集会によっては、リリースの内容が一方的だったり、背景に何らかの(例えば政治的)意図が伺えるものが認められるのも事実。「論文になるか否か」のみを評価基準とする点には異論もあろうが、少なくともメディア側にも、研究の完成度や「発表される理由」などを見抜く眼力が必要だといえそうだ。

 この論文のタイトルは、「Media Coverage of Scientific Meetings: Too Much, Too Soon?」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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