2002.05.31

ヒト化抗CD3抗体、2週間投与で1型糖尿病の進行を1年間抑制

 自己免疫性の早期1型糖尿病患者24人を対象とした第1/2相試験で、ヒト化抗CD3抗体を2週間静脈内投与すると、少なくとも1年間はインスリン分泌能を維持し得ることがわかった。同様の効果は他の免疫抑制薬でも報告されているが、ヒト化抗CD3抗体の場合は、投与期間が2週間と短いため副作用に比較的対処しやすい点が特徴。早期発見を発症予防につなげるための、現実的な介入手段として注目を集めそうだ。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌5月30日号に掲載された。

 1型糖尿病は、膵臓のβ細胞が破壊され、インスリンの分泌能が低下することで発症する糖尿病。ウイルス感染などが原因とされる「特発性」と、自らのT細胞がβ細胞を異物と認識して破壊してしまう「自己免疫性」に大別できる。

 自己免疫性の1型糖尿病では、臨床症状が出始める数年前から、抗膵島細胞抗体(ICA)や抗グルタミン酸脱炭酸酵素抗体(抗GAD抗体)などの上昇がみられる。家族歴があるなどのハイリスク患者では、これらの抗体を測定することで早期診断が可能だ。シクロスポリンやアザチオプリンなどの免疫抑制薬には、こうした早期1型糖尿病の進行を遅らせる効果が報告されている。しかし、これらの薬は連用する必要があり、発熱などの副作用のため実際には継続使用できないケースがほとんどだった。

 そこで研究グループは、腎移植などの免疫抑制薬として用いられており、短期間の投与で済む抗CD3モノクローナル抗体に着目。臨床で使われているマウス由来の抗CD3抗体(ムロモナブ、商品名:オルソクローンOKT3)をヒト化し、より副作用を減弱した抗体を作製して、1型糖尿病の進行をどの程度抑えられるかを調べた。

 対象は、7〜30歳の早期自己免疫性1型糖尿病患者24人。無作為に2群に分け、一方にのみヒト化抗CD3抗体を2週間静脈内投与した。年齢の中央値は、抗CD3抗体群(12人)が13歳、対照群(12人)が16歳。うち前者で3人、後者で5人が、診断時に糖尿病性のケトアシドーシスを生じていた。インスリン分泌能を反映する空腹時Cペプチド値は、抗CD3抗体群が0.20nmol/l、対照群が0.21nmol/l。数カ月内の血糖状態を反映するヘモグロビンA1c(HbA1c)値は、それぞれ9.27%と8.20%だった。

 1年後のインスリン分泌能をCペプチド反応で評価すると、抗CD3抗体群では試験開始時の103%と、ほぼ分泌能が維持されていることが判明。一方の対照群では、試験開始時の49%にまで落ちていた。インスリン投与量も、抗CD3抗体群では0.57Uから0.49Uへと体重1kg当たりの1日量を減らせたのに対し、対照群では0.44Uから0.59Uへと増加した。HbA1cは、抗CD3抗体群が試験開始時の9.27%から1年後は6.98%にまで改善されたのに対し、対照群は8.20%から7.53%とほぼ変わらなかった。

 一方の副作用は、12人中9人に発熱、9人に貧血が発現したほか、吐き気、嘔吐、関節痛、頭痛が各1人に発生したが、いずれも2週間の投与期間内に収まった。12人中7人には、手や胴、足に痒みを伴う皮疹が生じたが、30日後には解消した。なお、抗イディオタイプ抗体(抗体が抗原に結合する部位に対する抗体)は当初3カ月で12人中6人に認められたが、治療半年後には3人、1年後には一人だけとなっている。

 今回の結果が示唆するのは、2週間集中的に薬物投与を受ければ、その後1年間は1型糖尿病の進行をほぼ抑えられるということ。副作用もほとんどは治療期間内に収まるもので、現実的な治療法として十分許容できる範囲だ。ただし、ヒト化抗CD3抗体投与を受けた12人中、二人は治療に反応しなかったが、その原因ははっきりわかっていない。そうした点の解明や、効果がどの程度長続きするのかなどを検証する、より大規模で長期的な試験に期待したい。

 この論文のタイトルは、「Anti-CD3 Monoclonal Antibody in New-Onset Type 1 Diabetes Mellitus」。アブストラクトは、こちらまで。なお、この研究は米国国立衛生研究所(NIH)の助成研究で、この件に関するニュース・リリースをNIHが発表している。

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