2002.05.22

網膜の動脈狭窄、糖尿病の発症に先行して存在

 血糖値の上昇など臨床的に明らかな糖尿病の症状がなくても、網膜の動脈に狭窄がみられる人では、将来的に糖尿病を発症するリスクが高い可能性があることがわかった。米国の四つの地域で、約8000人の中高年者を3.5年間(中央値)追跡した前向きコホート研究による。研究結果は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌5月15日号に掲載された。

 糖尿病性網膜症や糖尿病性腎症などの細小血管疾患は、糖尿病の代表的な合併症。網膜における動脈の狭窄は、これら細小血管合併症の指標となる。今回の結果は、臨床的に明らかな糖尿病の症状が出ていない段階でも細小血管合併症が起こっている可能性に加え、「細小血管合併症そのものが糖尿病の発症・伸展に関わっている」可能性を示すものとして注目を集めそうだ。

 このコホート調査を行ったのは、米国Wisconsin-Madison大学眼科のTien Yin Wong氏ら。49歳から73歳までの、糖尿病でない男女7993人が対象になった。対象者はまず、1993年から1995年の間に眼底の撮影を受け、コンピューターで網膜の動脈と静脈の比(AVR)が算出された。AVRが小さいほど動脈狭窄の程度が大きいことを意味する。

 次にWong氏らは、1996年から1998年の間に、対象者に米国糖尿病学会のガイドラインに基づいた糖尿病の診断を行った(空腹時血糖値126mg/dl以上、随時血糖値200mg/dl以上、糖尿病薬服用者のいずれかがあれば糖尿病と診断)。その結果、291人が新たに糖尿病を発症していた(追跡期間0.7-5.5年、中央値3.5年)。

 網膜の動脈狭窄度に基づいて対象者を4群に分け、後の糖尿病発症との関係を調べたところ、最も狭窄度の強い群(AVR:0.57〜0.79)で糖尿病を発症していたのは104人。これに対し、最も狭窄度の小さな群(同:0.91〜1.22)では47人が糖尿病を発症していた。対象者の年齢、性、人種、居住地で補正した後も、オッズ比は2.09(95%信頼区間:1.47〜2.98)となり、狭窄度の強い人では狭窄が余り進んでいない人より2倍、3年以内に糖尿病になる確率が高いと見積もれることがわかった。

 以上よりWong氏らは、網膜における動脈の狭窄は、糖尿病発症の独立した危険因子であると結論している。

 この論文のタイトルは、「Retinal Arteriolar Narrowing and Risk of Diabetes Mellitus in Middle-aged Persons」。アブストラクトは、こちらまで。(関本克宏、日経メディカル

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