2002.05.21

【日本糖尿病学会速報】 劇症1型糖尿病の発症頻度が判明、日本人急性発症1型の約20%

 2日前から口渇、多尿、全身倦怠感があり初診。翌日、全身倦怠が増強し再受診するもそこで心肺停止に。蘇生後、血糖値は高値だがHbA1cは正常値上限から軽度上昇の程度、膵島関連の自己抗体は陰性で、膵島炎は見られなかった−−。このような臨床像を持つ劇症1型糖尿病の発症頻度は、日本人急性発症1型糖尿病の約20%であることが明らかになった。日本糖尿病学会の劇症糖尿病調査委員会がまとめた調査によるもので、大阪医科大学第一内科の花房俊昭氏が5月17日、「ワークショップ2:1型糖尿病の新知見」で報告した。

 劇症1型糖尿病の定義は、1.超急性にケトアシドーシスを伴って発症する、2.血糖は著明高値であるがHbA1cは正常上限から軽度上昇にとどまる、3.膵外分泌酵素が上昇している、4.膵島関連の自己抗体が陰性である、5.尿中CPRは<10μg/日、6.膵島炎はない、7.膵外分泌組織へのリンパ球浸潤が見られる−−というもの。

 この定義を基に委員会では、劇症1型糖尿病のスクリーニング基準を設定。以下の1から3をすべて満たすものとした。

 1 糖尿病症状発現後1週間前後以内でケトーシスあるいはケトアシドーシスに陥る。
 2 尿中CPR<10μg/日または負荷前血清CPR<0.3ng/ml(または食後2時間血清CPR<0.5ng/ml)。
 3 初診時のHbA1c値<8.5%。

 委員会は、この基準に基づいて、各委員が所属する施設で10年間の患者調査を実施した。その結果、スクリーニングできた222例中劇症型は43例(19.4%)で、男性が27例、女性が16例と男性に多かった。花房氏は、約20%という発症頻度について「予想より多い」とコメントした。

成人に先行感染を伴って発症する例が目立つ

 糖尿病学会会員に呼びかけて実施した全国調査では、これまでに144例(上記の委員施設調査の症例を含む)の劇症型糖尿病症例を集積している。

 同様に集積した自己免疫性糖尿病(132例)との比較では、罹患期間(劇症型4.6±3.1日、自己免疫性37.6±24.2日、p<0.0001、以下同)、HbA1c値(6.4±0.8%、12.1±2.1%、p<0.0001)、尿中CPR(4.2±3.5μg/日、21.1±14.0μg/日、p<0.0001)などで有意差が見られた。

 発症時の臨床所見の比較では、年齢(劇症型39.1±15.5歳、自己免疫性31.2±16.0歳、p<0.0001、以下同)、BMI(20.5±3.2、18.9±2.7、p<0.0001)、体重減少(3.1±2.8kg、6.0±3.7kg、p<0.0001)、感冒様症状(+88/−48、+33/−93、p<0.0001)などで明らかな差が認められた。

 これらの分析から花房氏らは、劇症1型糖尿病の主な特徴として、以下の9点を挙げた。1.日本人急性発症1型糖尿病の約20%である、2.有症状期間は<10日、3.血糖値は著明高値でHbA1cは正常上限から軽度上昇、4.ケトアシドーシスで発症、5.尿中CPR<10μg/日、6.膵外分泌酵素の上昇、7.膵島関連自己抗体陰性、8.膵島炎はマイナス、9.膵外分泌組織へのリンパ球浸潤。

 劇症1型糖尿病の成因については、10日以内という超急性の発症、発症前の感冒様症状の存在などから「ウイルス説」がある一方、一部症例で膵島炎が見られ、また自己抗体が確認できる症例もあることなどから「自己免疫疾患説」も出ているが、いずれにせよ詳細な分析を待たざるをえない。

 なお、同委員会では劇症1型の症例集積を継続しており、新規発症例について事務局へ連絡するよう呼びかけている。事務局の連絡先は、TEL:0726-84-6431、FAX0726-5-1655、電子メール:hanafusa@poh.osaka-med.ac.jp。またその際、発症時の血清10mlの保存を求めている。

 日本糖尿病学会の劇症型糖尿病調査委員会メンバーは以下の通り。牧野英一氏(委員長、愛媛大学)、花房俊昭氏(事務局、大阪医科大学)、今川彰久(大阪大学)、内潟安子氏(東京女子医科大学)、金塚東氏(加曽利病院)、川崎英二氏(長崎大学)、小林哲郎氏(虎ノ門病院)、島田朗氏(慶応大学)、清水一紀氏(愛媛県立中央病院)、豊田哲也氏(久留米大学)、丸山太郎氏(埼玉社会保険病院)。

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