2002.05.19

化学療法に伴う吐き気、手首のツボ刺激で緩和

 化学療法に伴う吐き気は、患者にとって最も辛い副作用の一つだが、「内関」(ないかん、Neiguan)と呼ばれるツボを電気刺激すると頻度や重症度が軽減することがわかった。ツボ刺激には「リリーフバンド」という医療用具を用いたが、この種の用具の効果が、プラセボ対照二重盲検試験で実証されたのは初めて。研究結果は、米国North Calorina大学のI. M. Treish氏らが、5月18日の一般口演「Symptom Control, Palliative, and Elderly Care」で発表した。

 内関は、手首の付け根の中央部から、1.5〜2cmほど肘寄りにあるツボ。古くから「吐き気止めのツボ」として知られ、わが国にも「船酔いやつわりの際は、内関を強く指圧したり、米粒を内関に貼り付けて持続的に圧迫すると良い」との民間療法がある。

 欧米では吐き気や乗り物酔いの予防を目的に、このツボを圧迫、あるいは電気刺激する医療用具が複数開発されている。「リリーフバンド」はそうした医療用具の一つで、ちょうど腕時計のような形。腕時計の文字盤に相当する部分に「経皮的電気刺激装置」があり、それを手首の内側に装着する仕組みだ。

 同装置は、既に乗り物酔いとつわり、化学療法後の吐き気止めと術後の吐き気止めという適応で、米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている(後2者の用途には購入の際に医師の処方箋が必要)。しかし、吐き気が収まるのが本当にツボ刺激の効果なのかを疑う声もあった。

 そこでTreish氏らは、外観はそっくりだが電気刺激をオフにした「プラセボ」装置を使い、二重盲検法で吐き気や嘔吐の頻度・重症度がどの程度変わるかを調べた。対象は、プラチナ系抗癌剤など、吐き気・嘔吐が高頻度で起こる化学療法を受ける癌患者44人。無作為に2群に分け、機能をオンにした装置、またはオフにした装置を装着して、化学療法の開始から5日間の吐き気・嘔吐について日誌を付けてもらった。

 なお、患者の性別や年齢、受けた化学療法の種類など、患者背景は両群でほぼ同一。電気刺激が悪影響を与える恐れのある、心臓ペースメーカー装着者は対象から除いた。また、デキサメタゾンやオンダンセトロンなどの制吐薬は、両群共に化学療法の実施前から予防的に投与し、試験中も必要に応じて服用してもらった。

 その結果、機能をオンにした装置を付けた患者では、嘔吐回数が1日平均1.9回。一方の「プラセボ」装置を付けた患者では、これが4.6回で、ツボ刺激装置が有意に嘔吐回数を減らすことが明らかになった(p=0.050)。ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)で評価した吐き気の重症度も、ツボ刺激装置装着群で1.54、プラセボ装置装着群で3.1と、有意にツボ刺激装置装着群で軽くなった(p=0.018)。

 効果の現れ方を時系列でみると、初日では両群に有意差はなく、2日目以降に嘔吐・吐き気を抑制する効果が大きくなった。化学療法中に一度も嘔吐しなかった人の割合は、ツボ刺激装置装着群で41%、プラセボ装置装着群で15%と、有意な差ではないがツボ刺激装置装着群で低い傾向があった(p=0.064)。なお、ツボ刺激装置装着群では2人に、腕がビクっとする、指が震えて装着部が痒いといった副作用が生じたが、いずれも軽微だった。

 Treish氏はこの結果について「通常の制吐治療を行っても、化学療法によっては嘔吐や吐き気を完全に抑えることは難しいことを考えると、制吐治療に追加して使用できる装置の有用性は高い」と評価。化学療法でひどい嘔吐・吐き気を経験したことがある患者や、乗り物酔いやつわりを起こしやすい「ハイリスク」の患者には、化学療法の際にツボ電気刺激装置の装着を考慮すべきだと述べた。

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