2002.05.18

【再掲】 【日本糖尿病学会速報】 糖尿病性腎症の発症や進行に関わる遺伝子に迫る

 大会初日最初の「腎症1」セッション「遺伝子レベルでの糖尿病性腎症・人工透析回避への道」では、糖尿病性腎症の発症や進行に関わる遺伝子の研究成果が発表された。現在、糖尿病性腎症や糖尿病自体は、生活・環境要因と複数の遺伝子が相互作用し発症すると考えられている。糖尿病性腎症の発症・進行と相関する遺伝子が複数明らかになれば、糖尿病診断と同時に患者の遺伝子のパターンを検査することで、糖尿病性腎症の発症や進行速度を事前に予測し、治療や生活改善にいかせる可能性がある。

 セッションでは、いくつかの遺伝子とその変異(遺伝子多型)の糖尿病性腎症との関連について、興味深い報告が相次いだ。例えば、滋賀医大第三内科の荒木信一氏は、ApoE e2遺伝子の変異が腎症発症の危険因子と報告した。また川崎医大糖尿病内分泌内科の斉藤美恵子氏は、ApoE2遺伝子を持つ糖尿病患者のレムナントリポ蛋白・ApoE2 IDLが腎メサンギウム細胞に影響し腎症進展に関与すると報告した。ApoE遺伝子は脂質代謝に関わるとされ、アルツハイマー病や高脂血症などとの関連も研究されている。

 食事・生活パターンから糖尿病発症・増悪リスクが予測できるのと同様に、これら遺伝子レベルの「パターン、個性」をDNAチップ(シリコンやガラスの板に、あらかじめ疾病遺伝子サンプルを配置し、患者の血液などから採取したDNAを作用させると、患者がどんな遺伝子を持っているか分かる検査器具)などにより検査することで、糖尿病性腎症の発症・重症化リスクを臨床現場でも予測したり、腎症発症の「その時」を捉え、治療・予防対策を講じられるようになる。

 最終的には人工透析という、患者のQOL的にも医療費的にも極めて大きな問題を生じる糖尿病性腎症の予防・進行阻止は、特に栄養・食生活の洋式化により糖尿病患者そして糖尿病性腎症による透析導入が増加しつつある日本では大きな課題である。

 現在わが国の透析患者約20万人のうち25%は糖尿病性腎症が原因とされ、なお増加傾向にある。また、新規透析導入患者の4割弱が糖尿病性腎症を原因とする。痴呆症のため透析がままならない患者の増加も予期される。今後「遺伝子レベルの診察」も可能になれば、糖尿病性腎症の予防・管理をより徹底し、週3日毎回6時間以上の時間と、一人年間500万円、既に1兆円以上もの医療費が費やされている人工透析患者の発生を食い止める新しい力になるかも知れない。

■訂正■
 最後の段落で「現在わが国の透析患者約20万人のうち4割は糖尿病性腎症が原因とされ、なお増加傾向にある」とあるのは「現在わが国の透析患者約20万人のうち25%は糖尿病性腎症が原因とされ、なお増加傾向にある」の間違いでした。その後に「また、新規透析導入患者の4割弱が糖尿病性腎症を原因とする」を加えました。同じ段落で「週3日毎回6時間以上の時間と、一人1カ月約60万円、既に1兆円以上もの医療費」とあるのは「週3日毎回6時間以上の時間と、一人年間500万円、既に1兆円以上もの医療費」に表現を改めました。

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