2002.05.16

2型糖尿病への医療介入、費用効果分析でも「積極的な降圧」がベスト

 2型糖尿病患者の健康寿命を延ばし、総医療費も削減する介入法として、血圧管理が血糖や血清脂質の管理よりも優れていることがわかった。血糖や血清脂質への介入では、健康寿命は延びるが、総医療費はかえって高く付くという。研究結果は、Journal of American Medical Association(JAMA)誌5月15日号に掲載された。

 糖尿病の三大合併症は糖尿病性腎症と網膜症、神経障害で、これらの疾患を合併すると、生活の質(QOL)が低下するだけでなく医療費も増大する。また、糖尿病患者は糖尿病でない人よりも、冠動脈疾患や脳卒中を起こしやすく、QOLや医療費に大きな影響を及ぼす。

 代表的な糖尿病の前向き研究「UKPDS」(United Kingdom Prospective Diabetes Study)は、糖尿病患者の寿命を1年延ばすのに、降圧治療の方が血糖管理よりも「効率的」である(治療必要人数=NNTが小さい)ことを示した研究として名高い。しかし、「合併症のためQOLの低い状態」か「健康でQOLの高い状態」かでは、同じ長生きでも意味は違ってくる。UKPDS研究からだけでは、この問いに対する答えは出なかった。

 そこで、米国疾病対策センター(CDC)を中心とする研究グループ「CDC Diabetes Cost-effectiveness Group」は、UKPDS研究のデータに基づいて糖尿病の転帰モデルを作成。「マルコフモデル」と呼ばれる状態推移モデルを用い、転帰ごとの医療費を求め、介入戦略別の費用効果を分析した。

 同グループが検討した介入戦略は、「糖尿病管理のABC」と呼ばれる三つの戦略。Aは血糖(ヘモグロビンA1cのA)、Bは血圧(Blood pressure)、Cは血清脂質(Cholesterol)を指す。これらの介入対象について、積極的な介入(生活指導+薬物療法で厳格に管理)を行った場合と、消極的な介入(原則として生活指導のみ)とで、どの程度費用効果が変わってくるかを調べた。効果の指標は健康寿命(QALY、質調整余命)を用いた。

 その結果、血糖コントロールを積極的に行うと、消極的な血糖管理しか行わなかった場合よりも、健康寿命が延びることが判明。健康寿命を1年延ばすために必要な追加医療費は、一人当たり4万1384ドル(約530万円)かかることがわかった。血清脂質でも同様で、積極的な介入を行った方が健康寿命が延び、それにかかるコストは一人1年当たり5万1889ドル(約660万円)となった。

 一方の血圧管理については、積極的な介入で健康寿命が延びる点は他の二つと同じだが、医療費は逆に一人1年当たり1959ドル(約25万円)安くなる。つまり、糖尿病患者の血圧を、適切な薬物療法できちんと下げれば、健康寿命を延ばすだけでなく医療費の節約にもなることが明らかになった。

 なお、これらの数値は、25歳以上の米国人が2型糖尿病と診断された時点から介入を開始し、亡くなるまで同じ介入戦略を取り続けたと仮定して算出した。薬物療法に用いる薬剤は、血糖管理がインスリンとスルホニルウレア系経口血糖降下薬(SU剤)、血圧管理がアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬とβ遮断薬、血清脂質管理がスタチン系薬を使ったとして医療費を求めている。

 この論文のタイトルは、「Cost-effectiveness of Intensive Glycemic Control, Intensified Hypertension Control, and Serum Cholesterol Level Reduction for Type 2 Diabetes」。アブストラクトは、こちらまで。

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