2002.05.09

【投稿】 診療報酬改定 医師はケアに手を出すな! 医師はもっと他のスタッフを生かせ!

 私は、事務長職を経験した理学療法士です。今回(2002年4月)の診療報酬改定について感想を述べさせていただきます。

 今改定は、今までの部署別単位増収作戦ではまったく通用せず、法人全体、病院全体などで収入を論議するような改定となっているように思います。これに対して、医療という人の命に関わる、世の中の根底を支えるサービスを医師が担っていることに、また、世の中の多くの人がそう受け止めたことに胡坐をかき、慢心、過信した結果、今日の時代の変化に旧態依然とした対応しかとれない姿を、医師自身が露呈したといわざるを得ないと思います。

 今日まで医療は、キュアの質の向上に全力を挙げてきましたが、その結果すべてとは言いませんが、人の命の尊厳について考えさせられる現象をまねいたのも事実で、その尊厳の向上を図ろうとして、医師たちの多くの意見に逆らい、今まさに、キュアからケアの質の向上を目指そうとしています。

 持論として、キュアは病気に侵される前のその人らしさに戻すことが役割だと思っています。ただ命を救う、命を救っても後遺症を残す、この状態を私はキュアとは認めません。そう考えると医師の研鑽することはまだまだたくさんあり、ケアに首を突っ込む暇などないと思いますし、ケアを学んだことのない医師が違う分野を担うこと自体おかしなことといわざるを得ません。

 ケアを専門に学んで専門家はたくさんいます。医師は自分の持っている社会的ステータスを今まで旗のスタッフを押さえ込むことで保ってきました。しかしこれからは、他のスタッフを生かすことで保つ時代が到来したと思います。これからの医療は、医師の立場と同じで、他のスタッフの地位、学問の向上なくして発展しないと思います。これができるのは、立場上、唯一医師だけだと思っています。医師には人格者が多く、私はこのことをとても期待している次第です。

 また医療だけにとどまらず、サービスの選択肢をいかに増やすか、サービスの量が乏しいとしたら、いかに特異的な特殊なサービスを整えるかが、また、ライフサイクルを意識したサービスをどう整えるかを、これからの生き残り作戦を実行しないと取り返しのつかないことになると思います。これからは定額サービスの時代ですし、介護報酬も改定のたびに減額されると思います。国費で医療、介護の普及を図ることから、民間保険を利用して、効率よく普及をしていく時代に変わっています。

 いよいよDRGが現実味を帯びてきました。不必要なサービスは、包括されてしまいます(たとえば、無資格者でもできるリハビリ訓練など)。民間が不必要なことはしません。与えられたお金で、たくさんのサービス業務の省力化、差別化を考え、どのように展開普及いくか考えています。

 それには先ず、このような考えが納得できるスタッフを集めることです。甘いものに蟻が群がるように今こそしっかりとしたオーナーの考えが必要だし、その考えに人が集まる時代になったといえます。具体的な戦略は個々の法人などによって異なると思いますが、次に大切なのは、その戦略を実現させる強い意志を持ち続けることです。

 「成せば成る」はずです。不可能と思うようなことでも必ず可能になってきます。大切なのは諦めないことです。これが今の変革期の医療の姿の実態だと思います。つまり医療の質の向上は、今やケアの質の向上に他ならなくなったのです。もっと具体的に言えば、キュアの質の向上の代表格であった医師の技術から医師以外のスタッフの技術にお金の流れが変わってきたのです。この変化が理解できない病院オーナー(ほとんどが医師)がいたとしたら、おそらく、その病院は倒産するかもしれません。

 医師はセンスが良いのでこの時代の流れを確実に掴む事ができると思います。どんな時代になろうとも、やはり医療におけるリーダーは医師だと思うので、今後の世の中における役割をどのように変化させるか期待したいものです。

 私は、そのケアの質の向上を担っているものこそ、リハビリテーション機能だと信じています。命は救われたが障害が残ってしまったという人が、この世の中には大勢いらっしゃるはずです。車いす利用者だけでも、約400万人の人がいるといわれています。現在、不況、不況といわれていますが、この400万人の人が外へ出られる都市のバリアーフリーを実現し購買能力を与えたら不況など一発で吹っ飛んでしまうのではないでしょうか。

予防医療の時代?

 日本の医療費は、これ以上膨張することに歯止めをかけなければとんでもないことになります。もう国費で医療費を面倒見るのは限界かもしれません。高齢者は増え続け、医療費がますます必要になり膨張し続けるのです。国民一人ひとりにしてみれば、現状に不足を感じているかもしれませんが、世界に誇れる医療の仕組みを持っているわが国としては、その仕組みを維持していくならば、もっと予防に力を注ぎ、病気になることを防ぎ、医療費が膨張しないことを考える必要あると思われます。

 予防医学には、その人らしさが維持継続させられる力があり、まさにキュアそのものだと思っています。予防医療に力を注いで、医療費抑制に成功した国がいくつもあります。無尽蔵にお金があると思ったら、おお間違いです。皆のこれからの医療、福祉のあり方を一人ひとりが考えて提案する時代が、そこに来ていると思います。どんどんアイディアを出しましょう。

医療の限界?

 人は悲しみや苦しみ辛さっと言ったものから逃避するため、科学を進歩させて来た側面を備えています。ある意味で悲しみ苦しみを避けようとしてきました。医学の進歩は、その際たるものだと思います。そして今や、遺伝子を操作したりクローン人間を生み出すに至ってしまいました。私は科学の進歩とは大自然の法則から人間が逸脱してしまうことを意味しているのではないかと思っていますが、正に矛盾しますし、私も医療の進歩という恩恵に預かったのですが、科学の進歩が人類を滅亡させるのではないか、新しい悲しみや苦しみを創造しているのではないかとも思っています。

 人は悲しいこと苦しいことに直面して、初めて成長すると思いますがその成長するエキスを人間は自ら摘み取っているのではないのでしょうか。健康の概念も変化し、今や生物学的にではなく、社会的、精神的な状態を健康というようになってきたように、医療の担う役割、概念も徹底的に変化させることが必要になってきています(今はかなり中途半端だと思う。だから生物学的研究が進んでしまうと思う)。

 だれしもが、この世に生を受け「らしく」生きたいと願っているはずです。らしくとは換言すると、ありのまま、そのままという状態ではないのでしょうか。現在、グローバル化という旗印で、先進諸国が開発途上国を開発しようとしていますが、アフリカにはアフリカの良さがあり、グローバル化を進めれば、アフリカらしさは失われると思います。私は医療も、ただ命を助けるのではなく、その人らしく生き続けられるかを考慮したものになると良いなと思っています。医療自身も「らしさ」とは何かをよく考え、医療らしさを失わないようにしたいものだと思います。

自由とは、選択肢がたくさんあること!?

 日本の高齢者サービスや障害者サービスには、なぜ、これほど選択肢がないのでしょう。サービスを提供している側から言わせれば、「そんなことはない」と言われるかもしれませんが、実際にサービスを買おうと思うと、その選択肢の乏しいことに驚愕します。

 自分らしさを保とうとするには、今までの人生の即席が重くのしかかってきますが、実際にサービスを買う側に立つとその選択肢の乏しい状況に、自分らしさを捨てなくては生きていけないのです。いろいろな生き方ができるようになって、初めて人間の生きていく尊厳を認めたサービスといえるのではないのでしょうか。これからの日本には、その人らしさを保てるように、サービスの選択肢を増やすことが、とても重要だと思いますし、それが自由ということだと思う次第です。

                日本リハビリテーション専門学校 理学療法士 
                      西沢 滋和(にしざわしげかず)


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