2002.05.09

【日本輸血学会速報】 血液事業の日韓比較、最大の相違点は「預血」か否か−−特別講演より

 5月8日に行われた特別講演3「Current Status of Transfusion Medicine in Korea :Influence of JSBT」では、韓国ソウル国立大学臨床病理学教授のKyou Sup Han氏(写真)が登壇。韓国における血液事業の歩みを紹介したが、そのなかで浮かび上がったのが、日本と韓国の血液事業に大きな相違点があることだ。

 韓国では、朝鮮戦争(1950〜1953年)を機に、米国海軍が「血液銀行」を導入。1954年には国立の血液センター、1958年には韓国赤十字社内に血液センターが設置された。当初は売血が中心だったが、1975年に売血が禁止され、以後は国民から無償提供される血液が用いられている。輸血感染症対策としては、B型肝炎ウイルス(HBV)抗原検査が1981年、抗ヒト免疫不全ウイルス(HIV)抗体スクリーニングが1987年、抗C型肝炎ウイルス(HCV)抗体スクリーニングが1991年から実施されている。

 同時期の日本における血液事業を振り返ると、米国赤十字社からの技術導入を受け、日本赤十字社東京血液銀行業務所が開業したのが1952年。当初は民間の血液銀行への売血に押されて献血量は増えなかったが、1964年の「献血推進」閣議決定を受けて献血量が増加、血液事業が軌道に乗った。ただし、国内で売血(血液製剤製造のための有償採漿)が完全に姿を消すのは1990年と、韓国に15年遅れてのことだ。輸血感染症対策は、HBVの抗原(HBs抗原)が1972年、抗HIV抗体が1986年、抗HCV抗体が1989年からスクリーニング対象となっており、いずれも韓国よりやや早い時期に検査導入が図られている。

 Han氏によると、韓国における2001年の献血者数は約250万人で、人口(約4700万人)の5.4%を占める。成分献血は全体の4分の1だ。一方のわが国における献血者数は約580万人(2000年度)で、人口比では約4.5%。成分献血者数も約90万人と、いずれも韓国よりやや少ない水準だ。

 献血者の年代的な特徴にも違いがある。韓国では徴兵制が取られているため、献血者の「8割が男性で、30歳未満の人が85%を占める」(Han氏)という。わが国では、献血者に占める30歳未満の人の割合は4割強に過ぎず、中高年者からの献血が多い点が特徴となっている。

 だが、最も大きな違いは、韓国の血液事業に「預血」という思想が保たれている点だろう。わが国でも血液事業がスタートした当初は、献血者に献血手帳を配布し、本人や家族などが輸血を必要とした場合に手帳の提示を求めていた。しかし、1982年には献血手帳から「供給欄」が削除され、手帳を持たない人でも必要量の輸血が受けられるようになった経緯がある。

 しかし韓国では、1回献血を行う度に「献血カード」が配布され、カード1枚で献血量と同量の輸血が無料で受けられるという仕組み。カードは譲渡が可能だという。まさに「預血」的性格を持つもので、同じ赤十字社主体の血液事業でも、日本と韓国では基本的な思想に大きな違いがあるわけだ。

 こうした類似点と相違点とを紹介した後、Han氏は1982年に発足した韓国輸血学会(大韓輸血学会)が、日本輸血学会とのコラボレーションを受けて大きく発展したと強調。設立50周年を迎えた日本輸血学会と、同じアジアの国として、今後も協力関係を続けていきたいと結んだ。

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