2002.04.26

【日本消化器病学会速報】 ピロリ菌の除菌療法、CAM耐性菌の増加が大きな問題に

 わが国で保険診療が可能なヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ菌)除菌療法は、いわゆる「PAC療法」と呼ばれる3剤併用療法だけ。プロトンポンプ阻害薬(PPI)のランソプラゾールまたはオメプラゾールと、抗菌薬のアモキシシリン(AMPC)、クラリスロマイシン(CAM)を1週間併用投与する治療法で、臨床試験では約9割の除菌率が確認されていた。

 しかし、実際の臨床現場での除菌率は年々低下している。主因はCAMへの耐性菌が増えたことだが、保険診療の範囲内では、除菌に失敗した人に対し、もう一度PAC療法を施すしかない。4月26日に行われたシンポジウム3「Hp除菌療法−保険適用後の問題点」(司会:北海道大学大学院消化器病態内科の浅香正博氏、大阪大学保健学科病態生体情報学の川野淳氏)では、4人の演者が耐性菌にまつわる課題と解決策を提示した。

 「保険の範囲内で再除菌治療を行っても、意義が少ない」。北海道大学光学医療診療部の加藤元嗣氏らが、北海道再除菌研究会での検討結果を基に得た結論だ。

 加藤氏らは、同研究会の参加11施設でPAC療法を受けたが、除菌が成功しなかった58人に対し、再度CAMだけを倍量にしてPAC療法を実施した(PPIはランソプラゾールを使用)。しかし、再除菌での成功率は、脱落者も含めたintent-to treat(ITT)解析で21.4%。指示通りに薬を飲んだ人でも22.2%と、わずか5人に一人で、再治療としては余りに不十分な成績であることがわかった。

 うち46人についてはCAMに対する菌の感受性検査が実施でき、37人がCAM耐性菌の保菌者だったが、耐性菌のある人でPAC療法で再除菌に成功したのはわずか2人(5.4%)だった。

CAM代替薬の最右翼はメトロニダゾール

 こうしたCAM耐性菌保菌者に対する有力な代替療法として期待を集めているのが、PAC療法のCAMの代わりにメトロニダゾール(MNZ)を用いるPAM療法だ。東京大学消化器内科の光野雄三氏らの検討では、PAM療法の除菌率は93%と、PAC療法の78.0%を上回る(PPIはランソプラゾールを使用)。興味深いことに、MNZへの耐性を獲得したH.ピロリ菌の保菌者に対しても、PAM療法の除菌率は80%とほとんど落ちない。

 講演後のディスカッションでは、CAM耐性菌対策として、「PPIとAMPCの4週間投与で8割ほどが除菌できた」(司会の川野氏)、「PPIとCAMに、ミノマイシンを組み合わせて除菌できた例があった」(大阪市立大学大学院消化器器官制御内科学の樋口和秀氏)など、他の抗菌薬による除菌経験も提示された。

 しかし、演者らの期待が最も高いのはPAM療法で、司会の浅香氏の「メトロ(ニダゾール)が一番期待できると思う人は挙手を」との問いかけに、壇上に並んだ9人が一斉に手を挙げる一幕もあった。

 浅香氏によると、MNZの製造元(塩野義製薬)は除菌療法への適応拡大には消極的。保険適用を受けるためには、日本消化器病学会や日本ヘリコバクター・ピロリ学会などが主導して臨床試験を行うしかないという。感受性試験の保険上の位置付けも含め、見直し期に入った除菌療法が、今後どのような形で定着していくのか−−。「年内になんらかの動きがある」(浅香氏)との言葉に期待したい。

■ 参考トピックス ■
◆ 2002.4.17 オメプラゾール併用のH. ピロリ菌除菌療法、「アモリン」は適応外に

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