2002.04.26

【日本消化器病学会速報】 ピロリ菌除菌後も抗潰瘍薬は必要か?、潰瘍の大きさが判断基準に

 胃潰瘍患者のうち、ヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ菌)に感染している人では、除菌成功後もプロトンポンプ阻害薬(PPI)などの抗潰瘍薬が処方され続けることが多い。潰瘍の再発を懸念してのことだが、潰瘍の直径が1cm未満ならば、除菌療法後は抗潰瘍薬を止めても差し支えないことがわかった。胃潰瘍患者120人を対象に、除菌療法とPPI8週処方とを比較した無作為化試験で判明したもの。この二つの治療戦略を直接比較した臨床試験は世界にも例がなく、大きな注目を集めそうだ。研究結果は、大阪市立大学大学院消化器器官制御内科学の樋口和秀氏らが、4月26日のシンポジウム3「Hp除菌療法−保険適用後の問題点」で発表した。

 対象患者は、潰瘍の直径が5mm以上で、H.ピロリ菌陽性の胃潰瘍患者120人。無作為に2群に分け、一方に除菌療法(1週間3種類の薬剤を服用)、他方にPPI療法(8週間PPIを服用)を行い、潰瘍のサイズ別に治癒率を比較した。

 試験で採用した除菌療法は、いわゆる「PAC療法」と呼ばれる3剤併用療法。PPI療法には、ランソプラゾール(1日量30mg)またはラベプラゾール(1日量40mg)を用いた。PAC療法での薬剤投与量は、PPIはPPI療法と同量で、ほかにアモキシシリンを1日1500mg、クラリスロマイシンを1日800mgとした。患者の登録期間は1997年4月から1999年4月で、この時期でのPAC療法の除菌率は、中断者も含めたintent-to treat(ITT)解析でも84%に達した。患者の平均年齢は56歳、ほぼ全員が男性で、喫煙率や潰瘍部位、潰瘍サイズの分布などに両群で違いはなかった。

 治療開始から4週後の治癒率は、ITT解析で除菌療法群が23%、PPI療法群が27%とほぼ同じ。しかし、8週後には除菌療法群が49%であるのに対し、PPI療法群では83%と大きな差が付いた(p<0.001)。

 ところが、潰瘍のサイズ別の解析では、両群の治癒率に大差が付いたのは潰瘍の直径が1.5cmを超えた場合のみ。潰瘍の直径が0.5〜1.0cmの場合は、除菌療法群の治癒率は89%で、PPI療法群(治癒率100%)と統計学的には差がなく、「潰瘍直径が1cm未満なら除菌療法だけでほぼ治る」(樋口氏)ことが明らかになった。

 ただし、潰瘍の直径が1.5cmを超える場合の治癒率は、PPI療法の77%に対し除菌療法ではわずかに5%。「大きい潰瘍は、除菌療法だけではほとんど治らない。直径1cm以上の胃潰瘍患者に除菌療法を行う場合は、除菌後も何らかの抗潰瘍治療が必要だろう」と樋口氏は結んだ。

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