2002.04.25

【日本消化器病学会速報】 軽い動脈硬化でも消化器所見や症状に影響、3万人のデータ解析で判明

 心電図の虚血性所見や血清脂質異常など、動脈硬化の進展度を反映する指標が、胃X線検査の有所見率や自覚的な消化器症状の頻度を左右することがわかった。約3万人の人間ドック受診者データの解析による。人間ドック受診者に普通にみられる、ごく軽度な動脈硬化でも、消化管に影響が出ることがわかったのは初めて。解析結果は、名古屋市立大学第一内科の城卓志氏らが、4月25日のシンポジウム6「消化器疾患と動脈硬化」で発表した。

 消化管を栄養している血管に重度の動脈硬化が生じると、虚血性大腸炎など様々な消化器疾患が起こる。しかし、「一見存在がわからない、日常生活に差し支えがない程度」(城氏)の動脈硬化が、消化管にどのような影響を与えるかについては不明な点が多かった。

 そこで城氏らは、愛知県の岡崎市医師会公衆衛生センターで、2000年4月からの1年間に人間ドックを受診した地域住民3万1546人の健診データを解析。動脈硬化の進展度を反映する検査値などの指標と、人間ドックで得られた消化器所見や自覚的な腹部症状との間に、何らかの相関がみられるかを検討した。

 動脈硬化の指標として採用したのは、1.眼底動脈硬化、2.心電図の虚血性変化、3.動脈硬化指数(総コレステロール値から高比重リポ蛋白(HDL)コレステロール値を引いた値を、HDLコレステロール値で割って算出)−−の三つ。解析対象者3万1546人のうち男性は1万8098人で、平均年齢は男女合わせて50.9歳だった。

 その結果、性・年齢層別の解析で、三つの指標のうち心電図を除く二つが、胃X線直接撮影検査の異常所見率と関連していることが判明。眼底動脈硬化が認められたり、動脈硬化指数が4以上の高値だった人では、胃角の変形や開大、小彎部の短縮や変形などが多いことがわかった。

 一方、自覚的な腹部症状では逆に、動脈硬化が進んでいる人で症状が少ないことが判明。眼底動脈硬化があったり、心電図に虚血性変化がみられた人で、下痢や胃の不快感・痛み、胸痛、胸焼けなどを訴える比率が少ないことが明らかになった。なお、これらの傾向には性別や年齢による違いがあり、40〜50歳代の男性で相関が最も強くなることも判明した。

 城氏は「動脈硬化が進んでいる人で増加した胃の形態異常は、胃角部の硬化を反映しているのではないか。一方、腹部症状の減少は、胃の運動能や知覚の低下を反映している可能性がある」との解釈を提示。“病気”とは明確に言えない段階の動脈硬化でも、消化器疾患の病態や頻度に大きく影響を及ぼし得るとした。

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