2002.04.25

【日本消化器病学会速報】 劇症肝炎患者への肝移植、課題残る適応判定ガイドライン

 劇症肝炎、なかでも亜急性型の患者の救命率を大幅に引き上げた肝臓移植。しかし、「移植を行うべきかどうか」を判定する適応ガイドラインには、解決すべき課題が多いことがわかってきた。4月24日のパネルディスカッション1「生体肝移植の現状と将来展望」では、埼玉医科大学第三内科の持田智氏らが、厚生労働省の特定疾患対策研究「劇症肝炎及びLOHFに関する全国調査」で得られたデータを解析。肝移植適応を判定するガイドラインの妥当性を検証した。

 劇症肝炎は、ウイルス感染や薬剤などにより肝機能が急速に悪化し、肝性昏睡や血液凝固機能の低下など、様々な症状を引き起こす難治性の肝疾患だ。発病後10日以内に脳症が現れる「急性型」と、それ以後に脳症に陥る「亜急性型」があり、亜急性型の方が予後が悪い。同じカテゴリーの疾患には、最終的には劇症肝炎と似た病態を示すが、肝機能障害の進行速度が遅く診断が難しい「遅発性肝不全」(LOHF)がある。

 持田氏らは、1998〜2000年の3年間で報告された劇症肝炎334例とLOHF35例について、救命率や治療法を過去の発症例と比較。生命予後を判定する移植適応ガイドラインの正診率などについても検討した。

 過去の登録症例との比較から明らかになったのは、内科治療での救命率が、急性型の劇症肝炎で向上したこと。1980年代では3割程度の人しか助からなかったのに、1990年代で救命率が徐々に向上し、1998年以降はおよそ半数を救命できた。インターフェロンやラミブジンなど抗ウイルス薬の処方率も増えており、こうした新しい治療手段が功を奏したと推察された。

 ところが亜急性型の劇症肝炎では、内科治療での救命率はわずかに向上したものの、未だに4人に3人は助からない。勢い、肝移植が行われるケースが増える。1998〜2000年の3年間では、急性型の9.4%に対し、亜急性型では23.0%に肝移植が行われた。LOHFでも14.3%に肝移植が行われている。肝移植を受けた患者の生存率は、急性型・亜急性型の劇症肝炎で8割、LOHFで6割に達することもわかった。

 欧米では肝移植のほぼ全例が脳死移植だが、わが国では患者の家族が肝臓の一部を提供する生体肝移植が主流だ。日本急性肝不全研究会が1996年に作成した「劇症肝炎における肝移植適応のガイドライン」は、脳症が出現した時点で、年齢やプロトロンビン時間などから、患者の“生きる見込み”を判定する。「このままでは見込みが無い」と判定された患者が、肝移植の適応となる。

 持田氏らは今回集計した3年間のデータを基に、このガイドラインによる生命予後の判定精度を検証した。すると、正診率は急性型で7割、亜急性型やLOHFでは8割程度であり、「臓器の提供」という重い決断を家族に持ちかけるには不十分であることが判明した。

 「肝萎縮」を評価項目に加えると、急性型劇症肝炎では予測精度を向上できることもわかったが、亜急性型やLOHFでは肝萎縮の有無と生存率とには相関がみられない。また、徐々に肝機能が低下するLOHFでは、脳症が生じた時点での判定では遅すぎないかとの懸念もある。さらに、亜急性型やLOHFには高齢者や基礎疾患を有する人が多く、合併症、特に感染症で亡くなるケースが多い。こうした点を踏まえ、「肝移植適応ガイドラインの改変と、LOHFに対するガイドラインの作成、そして合併症対策の三つが、劇症肝炎やLOHFにおける生体部分肝移植の課題」と持田氏は結んだ。

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