2002.04.24

【日本消化器病学会速報】 成人間生体肝移植のジレンマ解消策、門脈注入療法で腹水量が減少

 小児の先天性肝疾患だけでなく、劇症肝炎や肝硬変など成人の重篤な肝疾患に対しても、わが国では生体肝移植が行われるケースが増えてきた。生体肝移植は小児と成人を合わせて既に2000人近くに行われており、C型肝炎ウイルスに感染した元外相の河野洋平氏に、息子で総務政務官の河野太郎氏が肝臓を提供したケースは記憶に新しい。しかし、移植を受ける側(レシピエント)が成人の場合、大きなジレンマがつきまとう。

 生体肝移植では、健康な肝臓提供者(ドナー)の肝臓の一部を切り取り、レシピエントに移植する。肝臓の左葉を提供するケースが多いが、レシピエントが成人の場合、しばしば「提供される肝臓が小さすぎる」(過小グラフト)との問題が生じる。左葉より大きい右葉を提供すれば、過小グラフトは避けられるが、今度はドナーに危険が及ぶ。成人間の生体肝移植は、常にこのジレンマに直面してきた。

 九州大学の基本方針は「ドナーのリスクが少ない左葉を移植する」こと。しかし、腹水などの過小グラフト症候群は、右葉移植の場合よりも頻繁に起こる。そこで、同大大学院医学研究科消化器・総合外科の末廣剛敏氏らは、移植後にグラフトの微小循環を改善する薬剤を、門脈を通して直接グラフトに注入する「門脈注入療法」を編み出した。

 投与する薬剤は、メシル酸ナファモスタット(商品名:フサン)とプロスタグランジンE1のアルプロスタジル アルファデクス(商品名:プロスタンディン)、トロンボキサンA2合成酵素阻害薬のオザグレルナトリウム(商品名:キサンボン)、ステロイド薬のコハク酸メチルプレドニゾロンナトリウム(商品名:ソル・メドロール)の4種類。門脈を通してグラフトに7日間持続注入する。

 末廣氏らは4月24日のパネルディスカッション1「生体肝移植の現状と将来展望」で、門脈注入療法を行った9人と、行わなかった9人とで、術後の経過がどの程度変わったかを報告した。高ビリルビン血症は不変だったが、過小グラフト症候群のもう一つの主要症状である腹水が、術後1週、2週のいずれも、門脈注入療法を受けた人でははるかに少ないことがわかったという。

 過小グラフト症候群は、相対的に小さなグラフトに、大量の門脈血が流れ込むために起こると考えられている。門脈注入療法は、薬剤で直接グラフトの微小循環を改善して細胞を保護し、グラフト傷害を軽減するとの戦略だ。末廣氏は「成人間の生体肝移植における、過小グラフト対策の選択肢の一つとして、門脈注入療法は有用」と結んだ。

Information PR

ログインしていません

Close UpコンテンツPR

ログインしていません

もっと見る

人気記事ランキング

  1. 今冬はインフルエンザワクチンには頼れません! 特集◎いつもと違う! 今冬のインフルエンザ《1》 FBシェア数:116
  2. インフル迅速検査、全例には必要ありません! 特集◎いつもと違う!今冬のインフルエンザ《2》 FBシェア数:197
  3. 「たかが過換気」と侮ってはいけない 酸・塩基・電解質マネジメント FBシェア数:5
  4. 白衣にネクタイ、する? しない? 中山祐次郎の「切って縫うニュース」 FBシェア数:48
  5. その単語選んでちゃ論文の価値が下がりますよ! 英文校正者が教える医学論文執筆の極意 FBシェア数:0
  6. 初期臨床研修の内容・評価基準が大幅改定へ 7科必修化、コミュニケーション能力などの評価が追加 FBシェア数:40
  7. 内科系診療科をたらい回しにされ、最終的には… 医学と看護の交差点でケアを考える FBシェア数:31
  8. 内科専攻医数、過去3年平均から21%も減少 人口10万人当たり最多は東京都の3.83人、最少は高知県の0.70人 FBシェア数:157
  9. 耳症状のみ、ANCA陰性でも注意深く観察を ANCA関連血管炎性中耳炎を学ぶ FBシェア数:0
  10. 血圧ビッグデータからエビデンスは作れる インタビュー◎上島弘嗣氏(滋賀医科大学アジア疫学研究センター) FBシェア数:55