2002.04.23

2型糖尿病患者の心血管疾患リスク、「MI既往者並み」は過大評価か

 英国のスコットランド地方で行われた横断研究とコホート研究で、2型糖尿病患者の心血管疾患リスクは、心筋梗塞(MI)の既往者よりもはるかに低いことがわかった。糖尿病患者は心血管疾患を罹患しやすいことが知られており、わが国や欧米のガイドラインでは、糖尿病があれば血圧や血清脂質などを「MI既往者並み」に管理することが推奨されている。今回の研究結果は、こうしたガイドラインの根拠となった研究に異を唱えるもので、各国に波紋を広げそうだ。研究結果は、British Medical Journal(BMJ)誌4月20日号に掲載された。

 心血管疾患に罹患していない2型糖尿病患者の心血管イベント発症率は、心血管疾患に罹患した非糖尿病患者に匹敵する−−。1998年にこの衝撃的な研究報告(NEJM;339,229,1998)がフィンランドの研究者から発表されて以来、心血管疾患のリスク評価では、「糖尿病」は「MIの既往」と同じ重みを持つものとして扱われてきた。わが国の高血圧ガイドラインなどでも、糖尿病患者では一段厳格な管理が推奨されている。

 しかし、このフィンランドの横断研究は検出力が不足しており、「MI既往なし・糖尿病あり」群と「MI既往あり・糖尿病なし」群との心血管リスクの差は検出できないものだった。その後に行われたより大規模な研究でも、この点に関しては明確な結論が出ていない。そこで、英国Ninewells病院疫学・公衆衛生部門のJosie M. M. Evans氏らは、スコットランド地方のTaysideの住民を対象とした、二つの観察研究を実施。MIの既往と糖尿病とで、心血管疾患の発症リスクがはたして同程度とみなせるのかを検証した。

 Evans氏らが行った研究の一つは、フィンランドの研究とほぼ同一の手法を用いた横断研究。MIの既往がなく、1988年1月時点で45〜64歳の2型糖尿病患者1155人と、同年齢層の糖尿病に罹患していないMI既往者(発症8年以内)1347人を1995年末まで追跡し、総死亡率やMIによる(再)入院率を比較した。

 もう一つの研究はコホート研究で、1988〜1995年に2型糖尿病と診断されたMIの既往がない3477人を糖尿病コホート、同時期にMIで来院(再発を含む)した糖尿病でない7414人をMIコホートとし、両コホート間で総死亡率や心血管死亡率、MIによる(再)入院率を比べた。

 その結果、いずれの研究手法でも、「MI既往なし・糖尿病あり」群の心血管疾患発症率は、「MI既往あり・糖尿病なし」群より有意に低いことが判明。「MI既往なし・糖尿病あり」群を1とした場合のMI入院リスク比は、性別や年齢などで補正後も、横断研究の「MI既往あり・糖尿病なし」群では1.33(95%信頼区間:1.14〜1.55)、コホート研究の同群では3.10(同:2.57〜3.73)となった。コホート研究のみで検討した心血管死亡率も、「MI既往あり・糖尿病なし」群のリスク比は2.93(同:2.54〜3.41)と、MI既往者の方が2型糖尿病患者よりも高くなった。

 総死亡率に関しても同様で、「MI既往なし・糖尿病あり」群を1とした場合のリスク比は、横断研究の「MI既往あり・糖尿病なし」群で2.27(95%信頼区間:2.54〜3.51)、コホート研究の同群で1.35(同:1.25〜1.44)となることが明らかになった。

 以上から研究グループは、2型糖尿病を、MIの既往と同程度の心血管疾患危険因子として扱うのは“過大評価”ではないかと示唆。臨床現場では、患者一人ひとりの心血管疾患発症リスクを評価し、それに基づく予防策を講じるべきと提言している。

 この論文のタイトルは、「Comparison of cardiovascular risk between patients with type 2 diabetes and those who had had a myocardial infarction: cross sectional and cohort studies」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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