2002.04.23

Y染色体はタバコに弱い?、喫煙者の子供に女児が多いことが判明

 受胎時に両親のどちらかが習慣的に喫煙していると、女の子が生まれやすいことがわかった。どちらもタバコを吸わないカップルと比べると、両親ともヘビースモーカーの場合、男の子が生まれる確率が32%も低くなるという。福田産婦人科麻酔科(兵庫県赤穂市)の福田操男氏らの調べで判明したもので、研究結果は英国の医学誌であるLancet誌4月20日号に掲載された。

 生まれてくる子供の性別は、厳密には半々ではなく、世界のどこでも男児が少し多い。1999年のデータでは、日本では女の子1000人に対し、男の子が1056人の割合で誕生している。しかし欧米ではここ数十年、男児の比率が少しずつ下がっており、明確な原因は不明なものの、その一つとして環境汚染などに対する「Y染色体の弱さ」が指摘されていた。

 福田氏らは、1995年の阪神・淡路大震災の9カ月後に生まれた子供では、男児の比率が少なかったことに着目。「受胎時期のストレスや体内環境が、生まれてくる子供の性別を左右する可能性がある」と考えて、両親の喫煙の有無と子供の性別との関係を調べた。

 調査の対象は、診療所を妊娠や市民健診などで受診した、子供を持つ女性。調査票を配り、子供の性別と、その子供を妊娠した時期に両親が喫煙していたかや、1日当たりの喫煙量を答えてもらった。およそ2年間の調査で、子供1万1815人分のデータが集まった。子供の大半は自然妊娠で、女の子1000人当たり男の子1043人と、男女比は日本全国の平均値とほぼ同じだった。

 次に福田氏らは、両親の喫煙状況を、ノンスモーカー、スモーカー(1日20本未満)とヘビースモーカー(1日20本以上)の3段階に分けて、生まれてきた子供の男女比を調べた。すると、両親ともタバコを吸わない場合は、女の子1000人当たり男の子1214人と、平均より男の子がずっと多く生まれていることがわかった。

 ところが、母親がノンスモーカーで父親がスモーカーの場合、生まれてくる子供の男女比は女の子1000人当たり男の子1032人。父親がヘビースモーカーの場合はさらに男の子の比率が下がり、女の子1000人当たり984人となった。

 父親がノンスモーカーで母親がスモーカーの場合も同様で、女の子1000人当たり男の子は1059人。母親がヘビースモーカーだと、男の子の比率は872人にまで下がった。男の子の生まれる比率が最も低かったのは、両親共にヘビースモーカーの場合で、女の子1000人当たり823人だった。なお、調査時の両親の年齢と喫煙状況とには特に相関はみられなかったが、受胎時期の年齢については調べていない。

 調査対象の喫煙率は、男性が約7割、女性が約1割。「女性の喫煙率が低く、特に『父親は吸わないが母親が吸う』というケースが少なかったため、母親のみが喫煙する場合の男女比は統計学的には有意な差とはならなかった。しかし、傾向としては男の子が少なくなることは明らかで、受胎期の両親の“体内環境”が、Y染色体を持つ精子の受精や、受精卵の着床に影響すると考えられる」と福田氏は話している。

 この論文のタイトルは、「Parental periconceptional smoking and male: female ratio of newborn infants」。現在、全文をこちらで閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。

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