2002.04.22

エリスロマイシン耐性A群溶連菌、ついに米国で集団発生

 マクロライド系抗菌薬のエリスロマイシンに耐性を持つ、A群溶血性連鎖球菌(GAS)の集団感染例が、北米で初めて報告された。GASのマクロライド耐性菌は、日本では1970年代の半ば、フィンランドなど欧州では1980年代から問題となっていたもの。欧州や日本の情勢をみて、GASに対する抗菌薬の適正使用を進めた米国では、これまで散発例しか報告されておらず、今回の集団感染事例は大きな衝撃を与えそうだ。この事例は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌4月18日号に掲載された。

 GASは、のどや皮膚によくみられるグラム陽性菌。感染すると、しばしば急性咽頭炎や膿皮症(とびひ)、中耳炎など様々な臨床症状が現れ、筋肉や血液内などに侵入した場合は劇症型の感染症を起こすことがある。劇症型の一つが壊死性筋膜炎で、筋肉や皮膚組織などが徐々に破壊されるとの症状から、「ヒト食いバクテリア」との呼び名も付いた。

 GAS感染症のうち劇症型はごくわずかだが、わが国でも毎年数十人が劇症型GAS感染症に罹患しており、半数近くが死亡している。早期治療が救命の決め手になるため、耐性菌は重大な問題となっている。

 今回、耐性菌への集団感染が見つかったのは、米国Philadelphia州Pittsburghの私立学校。附属幼稚園を持つ初等学校(日本の小学1年生〜中学2年生が通学)で、米国Pittsburgh大学附属Pittsburgh小児病院が、1998年からGASの「定点観測」を行っていた。咽頭ぬぐい液培養で調べたGASの感染率は、月による変動はあるものの10〜20%程度で、症状がある生徒に限り、原則としてペニシリン、ペニシリンにアレルギーがある場合はエリスロマイシンを投与していた。

 この定点観測で、2000年12月までに単離されたGASは、すべてエリスロマイシンに対する感受性を持っていた。ところが、2001年1月に、エリスロマイシン耐性のGASが発生。2000〜2001年の調査期間中、GASに占める耐性菌の比率は48%にまで上った。単離された耐性菌の分子タイピングを行ったところ、すべて同一の遺伝子変異を持つことがわかった。

 そこで研究グループは、急性咽頭炎などのGAS感染症でPittsburgh小児病院を受診した患者の検体を無作為に抽出して耐性菌の有無を調べた。すると、2001年4〜6月に受診した患者から得た検体の38%が、エリスロマイシン耐性であることが判明。耐性菌が学校の中だけではなく、地域にも広まっていたことが、強く示唆されたという。

 GAS感染症治療の第一選択薬はペニシリンだが、研究グループによると、マクロライド系のアジスロマイシンなどが、GAS感染症を含む咽頭炎に対して頻繁に処方されているという。今回の耐性菌がPittsburghだけに留まっているのか、ほかの地域にまで広まっているのかはわからない。研究グループは、「疫学的な調査が進むまでは、咽頭炎に対するマクロライド系抗菌薬のルーチン処方は控えるべき」と提言している。

 この論文のタイトルは、「Erythromycin-Resistant Group A Streptococci in Schoolchildren in Pittsburgh」。アブストラクトは、こちらまで。

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