2002.04.18

呼吸器疾患の終末期医療と緩和ケアで問題提起

 4月4日に開かれた日本呼吸器学会のシンポジウム「呼吸器疾患の終末期医療と緩和ケア」では、これまで癌の分野で語られることの多かったターミナル医療という新たなステージについて、4人の医師が登壇。代表的な四つの呼吸器疾患について、それぞれ自らの関わり方を含めて率直な意見を表明し議論を深めた。


 写真−左から、岡田氏、吾妻氏、桂氏、志真氏。

 「肺癌」をテーマに報告したのは、国立がんセンター東病院の志真泰夫氏。同病院は、治癒が困難ながん患者のための病棟である「緩和ケア病棟(Palliative Care Unit=PCU)」を国立病院として初めて設置、積極的にこの分野に取り組んできた。その一端として「(緩和ケア病棟への登録が済んで入院までの間、在宅の患者を対象とする)緩和ケア外来でも、鎮静のためにモルヒネを使っている」と言及。他の演者らに消極的な発言が多い中で際立っていた。

 東京都老人医療センター呼吸器科の桂秀樹氏は、「慢性閉塞性肺疾患」(COPD)いついて発表。どの時点でターミナルと考えるのか、どのような経緯をたどるのか、疾患特有のターミナル期の特徴はないか−−を明らかにすべきと指摘した。判断材料として、東京地区の病院(412施設)を対象に実施したアンケート結果を紹介。終末期の診療に苦慮する疾患としてCOPDを挙げたのは81%の施設で、肺線維症69%、肺癌63%と続いた(回答数112)。

 ターミナル期の時期については、頻回の急性増悪が最も多く59%の施設が回答した。COPDのターミナルで苦慮する症状には、呼吸困難を挙げる施設が84%と多かった。「肺癌ターミナルとの違いがある」と回答したのは81%と高率で、肺癌でのノウハウをそのままは応用できない現状が明らかになった。

 また、患者や家族への末期で起こり得る病状の説明については、肺癌の場合が診断時に行うとする施設が70%であるのに対し、COPDでは診断時に行うとする施設が18%に過ぎない点も指摘した。

 日本医科大学付属病院第四内科の吾妻安良太氏は、「特発性肺線維症」(IPF)について発表。症例を紹介しつつ、ターミナル期とはどこかの問には「疾患が発見された時点でターミナル」との認識を示した。

 最後に登壇した八千代中央病院の岡田修氏は、「慢性肺高血圧症」(PH)で報告。なかでも難治で予後不良の代表である原発性肺高血圧症(PPH)と膠原病性肺高血圧症(CoPH)について、症例を交えて現状を発表した。

 患者背景として、30から40歳代の女性が多いことを指摘。「養育期の子供を抱えている場合も多い」と訴え、特に「身体障害者としての認定が必要」と経済面・福祉面での支援が急がれると訴えた。また、患者、家族のケアの面では、インターネットによる患者間の情報交換の場も重要と指摘した。

 座長の一人、東京都老人医療センター呼吸器科部長の木田厚瑞(きだ・こうずい、写真)氏は、吾妻氏も触れた点を再度取り上げ、「21世紀のターミナル医療の問題である」として以下の6点を挙げ継続的な取り組みの必要性を強調し議論を締めくくった。

 1.症状の緩和をどうするか(医療技術の問題)
 2.医療者と患者のコミュニケーションをどのようにもち、患者のQOLを向上させていくか
 3.ターミナル期の意志決定のあり方
 4.ターミナル期に発生する合併症の予防と治療
 5.患者や家族の心のケアへの取り組み
 6.臨死期のケアをどうするか

 終末期医療にあっては長らく、医師ほど消極的と見なされてきた。ターミナルには治療からケアへ切り替えわるポイントがあり、それはとりもなおさず“医療の敗北”を意味すると考えられてきたからだ。しかし、今回のシンポジウムを通じて、「医療の敗北ではない」ことの理解がじっくりではあるが着実に広がりつつある印象を受けた。21世紀のテーマとして、今後も議論が深まっていくことを期待したい。

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