2002.04.12

【日本感染症学会速報】 21世紀の感染症対策、生物テロも視野に−−招請講演より

 感染症分野における20世紀最大のトピックスは、天然痘の撲滅。以下、ペニシリンの発見、エイズの登場、1918年のインフルエンザ大流行、小児へのワクチン投与による集団防疫と続くという。21世紀には何がトップに来るのだろうか−−。4月12日の招請講演「The Most Important Developments in Infectious Diseases during the Past Year」では、米国Johns Hopkins大学のJohn G. Bartlett氏が講演。21世紀最初の年である2001年における、感染症分野の様々なトピックスを概括した。

 Bartlett氏がトピックスとして取り上げたのは、1.耐性菌、2.慢性疾患を引き起こす感染症、3.生物テロ、4.エイズ−−の4分野。話題は多岐に渡り、同氏の感染症分野に対する造詣の深さを伺わせた。

 まず耐性菌に関しては、欧州で国ごとの肺炎球菌(Streptococcus pneumoniae)の耐性菌比率と、βラクタム系抗菌薬の使用量とに正の相関があることが報告されたことを紹介。肺炎球菌やカンピロバクター(Campylobacter jejuni)における、フルオロキノロン(ニューキノロン)耐性菌の増加も問題になりつつあることを示した。

 Bartlett氏によると、こうした情勢を受け、米国疾病管理・予防センター(CDC)は今年3月、耐性菌の増加を防ぐ「12段階プラン」(12 Step Plan)を発表。医療機関に向けて具体的な耐性菌防止策を示すもので、不要なカテーテルは抜去する、狭域の抗菌薬を使う、地域での耐性菌発生パターンを知る、手洗いなどで院内感染を予防するといったプランが提示されたという。

 また、CDCと米国内科学会(ACP-ASIM)、米国感染症学会(IDSA)とが共同で急性気道感染症への抗菌薬投与ガイドラインを作成したことも、2001年の大きなトピックスだとBartlett氏。同ガイドラインでは、成人の非特異的上気道感染、急性副鼻腔炎、急性咽頭炎、急性気管支炎の4疾患について、主な起炎菌と診断基準、抗菌薬の適切な投与法を示している。

2001年に最も注目された感染症は炭疽、生物テロが現実のものに

 「1995年にはザイールでエボラ出血熱、1996年には英国で変異型クロイツフェルト・ヤコブ病、1997年には香港で新型インフルエンザ・ウイルスと、毎年一つ注目を集める感染症が発生する」。そう話すBartlett氏が、2001年に注目を集めた感染症として挙げたのが「炭疽」だ。

 炭疽菌が肺に感染する「肺炭疽」は、20世紀に18例しか報告されておらず、昨年の生物テロより前では1976年の報告例が最新だった。しかし、昨年は11人が皮膚炭疽、同じく11人が肺炭疽を発症し、肺炭疽患者のうち5人は死亡した。Bartlett氏によると、22人中20人は郵便物からの感染であることが確認されており、検出された菌はすべて同一で、接触者3万2000人が抗菌薬の予防的投与を受けたという。

 「今回の集団感染から得られた最大の教訓は、生物テロが現実に起こり得ることがわかったことだ」とBartlett氏は強調。抗菌薬の予防的投与の有用性が示された点は大きな収穫だと述べ、米国の生物テロ対策費が2000年の200万ドルから2001年は2億ドル、2002年は30億ドルへと大きく増額したことを紹介した。


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