2002.04.12

【日本呼吸器学会速報】 グラム染色で市中肺炎の原因菌を推定、重症例でも狭域抗菌薬で治療可能

 2000年に日本呼吸器学会が発表した「成人市中肺炎ガイドライン」の検証が各医療機関で始まっている。自治医科大学呼吸器内科では、同科で入院治療した市中肺炎の症例について、その診断と治療方法をガイドラインと照合させながら後ろ向きに検討。その成果を4月5日のポスターセッションで発表した。

 対象は、2000年1月から2001年12月までに、同科に入院し加療を必要とした市中肺炎60例。同科では2001年1月以降、入院時に喀痰グラム染色を励行し起炎菌の推定に努めていることから、60症例を2000年1月から12月までの29例(前期群)と2001年1月から12月までの31例(後期群)に分けて分析を行った。

 患者背景は次の通り。前期群では、年齢は21歳から86歳(平均63.0歳)、65歳以上高齢者は15例、男女比は17:12、基礎疾患は慢性呼吸器疾患が13例、その他疾患7例、なし9例。後期群では、年齢は27歳から91歳(平均69.4歳)、65歳以上高齢者は25例、男女比は20:11、基礎疾患は慢性呼吸器疾患15例、その他疾患7例、なし9例。どちらのグループとも、高齢者が多く、また基礎疾患を持つ症例が目立っている。

 ガイドラインに沿って、病型と重症度の分類を行ったところ、両グループとも特殊病態下肺炎(ガイドライン病型E)が多く、どちらも21例あった。また、重症度では、重症が目立ち、前期群が18例、後期群が22例だった。両群の患者背景はほぼ似通っていた。

 次にガイドラインとの整合性を分析するため、ガイドラインで推奨されている抗菌薬と実際に選択されていた抗菌薬を比較、その有効率も調べた。

 その結果、初期使用抗菌薬がガイドライン推奨薬と一致した症例は、前期群で15例(51.7%)、後期群で10例(32.3%)だった。初期治療の有効率は、前期群で82.7%(24例)、後期群で90.3%(28例)だった。後期群で推奨薬と一致しない症例が増えているが、有効率は高水準を保っていた。

 不一致症例の内訳を調べたところ、狭域抗菌薬を1剤選択は前期群で9例、後期群で18例、そのうちグラム染色所見から薬剤を決定した症例は、それぞれ2例、7例だった。広域抗菌薬を1剤選択は前期群で3例、後期群で0。2剤併用が前期群で2例、後期群で3例だった。発表者らは、グラム染色所見からスペクトルの狭い薬剤を選択する傾向が強くなったためと推察している。

 さらに重症例に絞って初期抗菌薬とその有効率を比較したところ、ガイドライン推奨薬と一致していた症例は、前期群9例(50.0%)、後期群5例(22.7%)で、特に後期群で不一致症例が多かった。ただし、初期治療の有効率は前期群83.3%(15例)、後期群91.0%(20例)と高水準だった。

 ガイドラインの推奨薬との整合性が低い結果だったが、発表者らは「重症の症例であってグラム染色で原因菌を推定できれば狭域抗菌薬で十分治療が可能であった」と結論付けている。

 なお、実際にグラム染色を実施していた症例を調べたところ、前期群では7例で、後期群では18例で実施されていた。原因菌が推定可能だったのは、前期群で4例(S.pneumoiae3例、H.influenzae1例)、後期群で7例(S.pneumoiae5例、M.catarrhalis2例)だった。


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「市中肺炎診療の実態調査」ご協力のお願い

 MedWaveは、日本呼吸器学会および日本感染症学会の開催を機に、「市中肺炎診療の実態調査」を実施しております。医療現場の第一線で活躍されている先生方に、外来で遭遇する肺炎(市中肺炎)の診療方法や考え方、抗菌薬の処方経験、市中肺炎診療に関する情報ニーズなどをお伺いし、市中肺炎診療の実態を明らかにすることを目的としております。調査結果は後日、MedWave上で紹介する予定です。ご多忙のところ恐縮ですが、何卒ご協力を賜りますようお願い申し上げます。アンケート画面は --> こちらから

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