2002.04.12

トラスツズマブ、ドセタキセルとの併用に相乗効果

 トラスツズマブ(わが国での商品名:ハーセプチン)をドセタキセル(商品名:タキソテール)と併用すると、単剤投与より高い治療効果が得られることが明らかになった。症例数は少ないものの、奏効率は標準的な併用法であるパクリタキセル(商品名:タキソール)との組み合わせとほぼ同程度で、副作用のためパクリタキセルとの併用が行えない患者にとっては朗報と言えそうだ。研究結果は、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌4月1日号に掲載された。

 トラスツズマブは、上皮細胞成長因子受容体(EGFR)の一種、HER2蛋白に対するヒト化モノクローナル抗体。HER2蛋白が細胞膜上に過剰発現している、いわゆるHER2陽性の腫瘍に対して顕著な治療効果が認められており、わが国でも昨年6月から販売が開始された。これまで、アントラサイクリン、シクロホスファミド、パクリタキセルなどとの併用が試みられてきたが、アントラサイクリンとシクロホスファミドとの併用療法では重篤な心毒性が認められたため、米国では、パクリタキセルとの併用が勧められている。

 米国Texas大学M.D.Anderson癌センターの研究グループは、ヌードマウスを用いた実験で、トラスツズマブとドセタキセルとを併用すると、抗腫瘍効果が相乗的に増えることに着目。HER2陽性の転移性乳癌患者30人を対象とした第2相試験で、両薬を併用した場合の治療効果を調べた。

 投与方法は、トラスツズマブとドセタキセルをそれぞれ週1回、3週間連続投与した後1週間休薬する4週間1コースのスケジュール。ドセタキセルの投与量は体表面積1m2当たり35mg、トラスツマズブの初回投与量は体重1kg当たり4mgで、維持量は2mgとした。

 患者は平均6コースの治療を受けたが、併用療法の客観的な奏効率(ORR)は63%(95%信頼区間:44〜80%)、病気が進行するまでの平均期間(TTP)は9カ月となった。トラスツズマブ単独投与の治療奏効率は12〜40%、パクリタキセルとの併用の同率は61〜81%であることが報告されており、トラスツズマブとドセタキセルの併用はトラスツズマブとパクリタキセルとの併用とほぼ同等の治療効果があることがわかったという。

 一方の有害事象については、グレード3〜4の好中球減少は26%、グレード3の疲労や下痢はそれぞれ20%と5%の患者に確認されたが、重篤な毒性は比較的少なかった。

血清HER2-ECDが治療効果の予測指標になる可能性も

 興味深いのは、今回の臨床試験で、血清中のHER2細胞外ドメイン(HER2-ECD)量と治療の奏効率との間に相関が認められた点だ。研究グループは、1.免疫染色法(IHC法)、2.蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH法)、3.血清HER2-ECD量−−という三つの指標について、治療奏効率との関連を調べた。

 前2者はトラスツズマブの投与対象者の絞り込みに通常持ちいられる検査法だが、IHC法では染色の度合いが2+未満の患者と3+(強陽性)の患者とで、奏効率にはほとんど差がみられなかった。FISH法でも同様で、陽性患者の奏効率は67%、陰性患者では50%で、陽性患者の方が高い傾向はあったが有意な差にはならなかった(p=0.6)。

 ところが、血清HER2-ECD値で奏効率を比較すると、治験組み入れ時(ベースライン)のECD値が高値の患者では治療奏効率が76%となり、低値の患者での33%と比べ、治療効果が有意に高いことが判明(p=0.04)。治療中のECDレベルの変化と、治療効果との相関も認められた。

 血清HER2-ECDはこれまで、乳癌の転移や再発を予測する検査値として注目されてきた。しかし、今回の検討で、治療効果の予測にも使える可能性が出てきたと言える。研究グループは、「今回の臨床試験は症例数が少ないため確定的なことは言えないが、血清HER2-ECD値は、患者の治療効果を予測する上で大きく役立つ可能性がある」と結論付けている。

 この論文のタイトルは、「Phase II Study of Weekly Docetaxel and Trastuzumab for Patients With HER-2 Overexpressing Metastatic Breast Cancer」。アブストラクトは、こちらまで。(張辛茹、医療ジャーナリスト)

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