2002.04.10

メトトレキサート服用のリウマチ患者、非服用者より死亡率が低いことが判明

 米国などで慢性関節リウマチ治療の第一選択薬として使われているメトトレキサート(わが国での適応商品名:リウマトレックス)が、リウマチ患者の生命予後を改善する可能性があることがわかった。米国で行われた前向き追跡研究で、同薬の服用者では非服用者よりも総死亡率が6割低いことが判明したため。疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)を選ぶ際には、症状の改善度に加え、今後は生命予後も考慮されるようになりそうだ。研究結果は、Lancet誌4月6日号に掲載された。

 この研究を行ったのは、米国Kansas大学関節炎研究センター財団と、米国Harvard大学附属Massachusetts総合病院の研究グループ。同研究グループは、DMARDの薬効を比較した臨床試験や観察研究で、症状や患者の生活の質(QOL)の改善に関するデータは豊富だが、生命予後に関する検討が欠けている点に着目。Kansas大学附属Wichita関節炎センターの受診患者を前向きに追跡し、メトトレキサートや他のDMARDの服用者と非服用者とで、生命予後が変わるかどうかを調べた。

 過去20年間の受診患者1240人のうち、メトトレキサートを一度でも処方された経験のある患者(中断者も含む)は588人。平均6年間の追跡期間で、全体で191人、メトトレキサート服用者では46人が死亡した。ただし、患者の平均年齢は服用者も非服用者も57歳で、平均血圧や高血圧・糖尿病の合併者比率などに違いはなかったが、リウマチの重症度はメトトレキサート服用者で有意に重く、併用薬数、ステロイド併用率なども服用者で高かった。

 そこで、研究グループは患者背景の違いや組み入れ年、追跡年数などを補正して、非服用者の死亡率を1とした場合の服用者の死亡ハザード比を求めた。その結果、メトトレキサート服用者の死亡ハザード比は0.4(95%信頼区間:0.2〜0.8)となり、服用者で有意に死亡率が低いことが明らかになった。

 また、死因を冠動脈疾患とそれ以外に分けて解析すると、メトトレキサート服用者では、冠動脈疾患死のハザード比が0.3(95%信頼区間:0.2〜0.7)と、特に低くなっていることもわかった。

 なお、スルファサラジン(サラゾスルファピリジン、わが国での適応商品名:アザルフィジンなど)や水酸化クロロキン(本邦では発売中止)、ペニシラミン(本邦では適応外)など他のDMARDでは、服用者と非服用者で死亡率に有意差はなかった。

 慢性関節リウマチの罹患者は、非罹患者よりも平均余命が短く、特に心血管疾患による死亡者が多いことが知られている。その機序として、リウマチによる慢性炎症状態が、動脈硬化を促進すると考えられている。研究グループは、メトトレキサートにある全身性の抗炎症作用などが、冠動脈疾患死を減らし、生命予後を改善したと考察している。

 わが国では1999年8月から、慢性関節リウマチに適応を持つメトトレキサート製剤の販売が開始されたが、「重篤な副作用により、致命的な経過をたどることがあるので、緊急時に十分に措置できる医療施設及び本剤についての十分な知識とリウマチ治療の経験をもつ医師が使用すること」との警告や「過去の治療において、非ステロイド性抗炎症剤及び他の抗リウマチ剤により十分な効果の得られない場合」との適応制限があるためか、処方頻度は決して高くない。

 特に心血管・代謝系疾患では、欧米とわが国で有病率や病態が大きく異なるため、海外での検討結果をそのまま導入はできない。しかし、本研究が示した「薬剤による生命予後の違い」という観点は、わが国での薬剤評価においても生かされるべきではないだろうか。患者の症状だけでなく、生命予後を改善する(悪化させない)という観点で、抗リウマチ薬が比較検討されることを望みたい。

 この論文のタイトルは、「Methotrexate and mortality in patients with rheumatoid arthritis: a prospective study」。アブストラクトは、こちらまで。

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