2002.04.10

神経芽細胞腫の新生児スクリーニング、生存率を改善せず

 新生児や小児に神経芽細胞腫のスクリーニング検査を行っても、集団としての生命予後は改善されないとする研究報告2報が、New England Journal of Medicine(NEJM)誌4月4日号に掲載された。わが国は1970年代から、世界に先駆けて神経芽細胞腫のマススクリーニングを新生児に導入しており、現在でも6カ月検診の一環として実施する自治体は少なくない。今回の研究結果は、わが国の新生児スクリーニング事業にも大きな影響を与えそうだ。

 神経芽細胞腫は、1歳未満で発見されるものと、1歳以降で発見されるものとでは大きく転帰が異なる。1歳未満で発見された神経芽細胞腫の多くは自然に退縮するのに対し、1歳以降で発見されたものは比較的たちが悪く、既に遠隔転移が起こっている場合(ステージ4)も少なくない。

 今回報告された研究の一つは、カナダで生後3週および6カ月の新生児を対象に行われたマススクリーニングに関するもの。もう一つは、ドイツで1歳時に実施したマススクリーニングに関する研究だ。いずれも、わが国で行われている検査と同様に、尿中のホモバニリル酸(HVA)とバニリルマンデル酸(VMA)の濃度を指標にスクリーニングを行った。

 カナダの研究では、Quebec州で1989年から1994年までの5年間、新生児マススクリーニングを実施して、神経芽細胞腫による小児の死亡率がカナダや北米の他の州と異なるかを比較した。すると、この期間に生まれた小児約48万人のうち22人が神経芽細胞腫で死亡したが、この比率はマススクリーニングを行っていない他の4地域と変わらず、「早く見つけても生存率は改善されない」ことがわかった。

 ドイツの研究では、1歳以降発症例を見つけることを目的に、ドイツ16州中6州で1995〜2000年に1歳時マススクリーニングを実施。その期間に対象州で1歳を迎えた約260万人と、対象外の州の約210万人の小児との間で生命予後の違いを比べた。

 その結果、1.スクリーニング受診者(受診率約6割)では149人が神経芽細胞腫と診断されたが、スクリーニング時には陰性だった小児の中から後に55人が神経芽細胞腫を発症した、2.ステージ4の神経芽細胞腫発生率や神経芽細胞腫患者の死亡率は、スクリーニング実施州も非実施州も変わらない−−との2点が明らかになった。

 これらの研究が示唆するのは、6カ月時や1歳時に、マススクリーニングとして神経芽細胞腫の検査を行っても、「早く見つける」ことのメリットが認められないということ。わが国では、マススクリーニングで新生児に神経芽細胞腫が見つかった場合、経過観察を行う医療機関も少なくないが、侵襲的な検査を行ったり、すぐに手術する医療機関もある。現状では“たちの悪い”タイプの神経芽細胞腫を効率良く見つけられず、場合によっては“無意味な侵襲”を与える恐れがある以上、この疾患をマススクリーニングする意義には大きな疑問符が付けられたと言えそうだ。

 カナダの研究論文のタイトルは、「Screening of Infants and Mortality Due to Neuroblastoma」。アブストラクトは、こちらまで。ドイツの研究論文のタイトルは、「Neuroblastoma Screening at One Year of Age」。アブストラクトは、こちらまで。

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