2002.04.09

ACS患者の心事故予防に抗菌薬はやはり効く? 「3カ月投与」で心事故発生率が4割低下

 急性冠症候群(ACS)患者約150人を対象に行われたプラセボ対照二重盲検試験で、抗菌薬群では約1年半後の心事故発生率が4割低いとの結果が報告された。3月に開催された米国心臓学会(ACC)では、「AZACS」と「WIZARD」の二つのプラセボ対照二重盲検試験で、抗菌薬に心事故予防効果がないとの結果が発表されたばかり(関連トピックス参照)。使用抗菌薬の違いか、投与期間の差か、はたまた試験規模の違いが影響しているのか−−。抗菌薬のACS予後改善効果については、今後も議論が続きそうだ。研究結果は、Circulation誌4月2日号に掲載された。

 この試験「CLARIFY」(Clarithromycin in Acute Coronary Syndrome Patients in Finland)は、フィンランドHelsinki大学中央病院のJuha sinisalo氏らが実施したもの。AZACSやWIZARDでは、抗菌薬としてアジスロマイシンを用いたが、CLARIFYでは同じマクロライド系のクラリスロマイシンを用いている。薬剤の投与期間も、AZACSでは5日間、WIZARDでは2週間だが、CLARIFYでは3カ月だ。

 CLARIFYの対象患者数は148人で、AZACS(約1500人)やWIZARD(約7700人)より小規模。平均年齢は63歳で女性比率は約3割、全員が白人だ。ACSの内訳は、3割が不安定狭心症で残りが非Q波梗塞。クラリスロマイシン群(74人)の47%、プラセボ群(74人)の36%が高血圧を合併しており(群間の有意差なし)、4人に一人は心筋梗塞の既往があった。

 試験開始時には、ほぼ全員がアスピリンを処方されており、8割強がβ遮断薬、アンジオテンシン系抑制薬(アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬またはアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬)は2割、スタチン系薬は4割が服用していた。両群共およそ3割の患者が試験薬以外の抗菌薬を併用していたが、群間の差はなかった。

 介入方法は、クラリスロマイシン(わが国での商品名:クラリス、クラリシッド)500mgまたはプラセボを、85日間服用するというもの。1次評価項目は3カ月後の複合予後(死亡+心筋梗塞+不安定狭心症)、2次評価項目は試験終了時の心事故発症率(死亡+心筋梗塞+不安定狭心症+脳卒中+重度の末梢虚血)とした。平均追跡期間は555日(138〜924日)。

 その結果、1次評価項目に関しては、到達率がクラリスロマイシン群で15%、プラセボ群で28%で、クラリスロマイシン群の方が低い傾向はあるものの有意な差とはならなかった。一方、2次評価項目の「全追跡期間中の心事故発症率」については、クラリスロマイシン群が22%、プラセボ群が36%となり、絶対値で14%、相対的には41%クラリスロマイシン群の方が低くなった(p=0.03)。2次評価項目の構成要素中、両群に有意差があったのは「心筋梗塞の発症率」のみで、クラリスロマイシン群で7%、プラセボ群で20%だった。

 「ACS患者の予後改善に抗菌薬が効く」との仮説の根拠は、1.虚血性心疾患発症者にChlamydia pneumoniae感染者が多い、2.動物実験で血管へのChlamydia pneumoniae感染が動脈硬化性の変化を引き起こした−−の2点。ただし、血清中のChlamydia pneumoniae抗体上昇と血管などの局所感染の有無とにはあまり良い相関がないとの報告もあり、そのためか、本論文では試験対象者のChlamydia pneumoniae抗体保有率は提示されていない。

 また、クラリスロマイシンなどのマクロライド系抗菌薬には、抗菌効果だけでなく抗炎症効果もある。どちらの効果が今回の結果に結びついたのかは不明だが、研究グループは「急性感染なら数日で抗菌効果があるが、血管や歯周などの慢性感染では長期投与が必要であり、投与期間の長いCLARIFY試験で心事故予防効果がみられたのは慢性感染に対する抗菌効果が発揮されたためではないか」との考察を行っている。

 この論文のタイトルは、「Effect of 3 Months of Antimicrobial Treatment With Clarithromycin in Acute Non-Q-Wave Coronary Syndrome」。アブストラクトは、こちらまで。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.3.19 再掲】ACC '02速報】心房細動の治療戦略やクラミジア除菌の位置付けが明確化−−LBCT 1より

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