2002.04.08

アンジオテンシン-(1-7)の心保護作用、動物実験で示唆

 心筋梗塞モデルラットを用いた検討で、アンジオテンシン-(1-7)(Ang-<1-7>)を静注すると、心筋梗塞後の心不全発症を抑制するという研究結果が発表された。心不全は心筋梗塞の主要な合併症の一つで、決め手となる予防策がなかっただけに、Ang-(1-7)の心筋保護薬としての潜在力に注目が集まりそうだ。研究論文は、Circulation誌4月2日号に掲載された。

 Ang-(1-7)はアンジオテンシン1と2のいずれからも切り出される活性型ペプチド。内因性のアンジオテンシン2抑制因子として注目されており、アンジオテンシン変換酵素(ACE)によって分解されることが知られている。

 オランダGroningen大学のAnnemarieke E. Loot氏らは、雄性Sprague-Dawleyラットを心筋梗塞作製群と偽手術群に分け、心筋梗塞作製群には冠動脈を結索して人為的に心筋梗塞を誘発。手術2週間後に、心筋梗塞作製群をさらに2群に分け、Ang-(1-7)群(10匹)には24μg/kg/時のAng-(1-7)を持続静注、生食群(10匹)には生理食塩水(生食)を持続静注した。偽手術群(10匹)には生食を持続静注した。

 この3群間で持続静注の開始8週後に梗塞サイズを調べると、Ang-(1-7)群では生食群に比べ、血中Ang-(1-7)濃度は有意に高かったものの、梗塞巣のサイズは両群とも30%前後で有意差はなかった。しかし、生食群では偽手術群より心筋細胞が有意に肥大していたが、Ang-(1-7)群では有意な心筋肥大がみられなかった。

 また、血行動態も、Ang-(1-7)群では偽手術群に比べ正常に保たれていた。生食群では偽手術群に比べ、左室収縮期圧、左室拡張末期圧、左室収縮脳・拡張能、平均血圧、冠血流量のいずれも有意に悪化していたが、Ang-(1-7)群では、偽手術群と比べ有意な悪化を示したのは左室収縮能だけだった。とりわけ左室拡張末期圧は、Ang-(1-7)群で生食群より40%も減少していた。

 さらに、Ang-(1-7)群では、大動脈の血管内皮機能が偽手術群と同程度に維持されていることがわかった。生食群ではこれら両群に比べ、血管内皮機能は有意に低下している。

 Loot氏らは、心筋梗塞後亜急性期における、Ang-(1-7)とACE阻害薬投与に共通の作用として、1.左室拡張末期活の減少、2.大動脈血管内皮機能維持、3.冠血流量増加、4.心筋肥大の抑制−−があるとした。一方、Ang-(1-7)とACE阻害薬との違いとして、1.血圧を低下させず維持する傾向がある、2.毛細血管密度を改善しない−−の2点を挙げた。

 研究に対する論説(editorial)では、Ang-(1-7)研究の第一人者、米国Wake Forest大学のCarlos M. Ferrario氏が、「Loot氏らによる知見により、Ang-(1-7)が心機能や心機能に影響を及ぼす情報伝達に果たす役割を、より積極的に研究する道が開けた」と評している。

 この論文のタイトルは、「Angiotensin-(1-7) Attenuates the Development ofHeart Failure After Myocardial Infarction in Rats」。アブストラクトは、こちらまで。(宇津貴史、医学ライター)

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