2002.04.02

【日本内科学会速報】 腎機能が低下している症例にはRA系阻害薬を

 腎機能が低下している症例にこそレニン・アンジオテンシン(RA)系阻害薬を適切に、慎重かつ積極的に使用すべきだ−−。東北大学大学院医学研究科病態制御学講座分子血管病態学分野教授の伊藤貞嘉氏は3月28日、日本内科学会の教育講演「慢性腎不全の現状と対策」の中でこう指摘した。これまで、RA系抑制薬は腎機能を急激に悪化させたり、血清カリウム値を上昇させたりすることがあるため、臨床の現場では腎機能障害の患者への投与を躊躇しがちであった。

 講演の冒頭で伊藤氏は、慢性透析患者の急増を懸念。2000年末時点で慢性透析患者が20万人を超えてしまい、さらにその透析医療費が1兆円以上(患者一人当たり年間540万円)に及んでいる点を強調し、医療費の面からも慢性透析に至らせない対策が急務であると訴えた。

 ちなみに伊藤氏が示したデータによれば、新規透析導入患者は、2000年時点で3万1925人(1990年の1.92倍)。その内訳は、糖尿病性腎症1万1685人(1990年の2.7倍)、慢性糸球体腎炎1万381人(1990年の1.36倍)、腎硬化症2428人(1990年の2.7倍)となっている。

 伊藤氏は、透析患者の増加の背景について、10年以上の長期透析患者が23%という透析医療の進歩を挙げる一方で、糖尿病の患者(2型)の増加を挙げた。糖尿病では、否定できない人を含めると1300万人に上るとする数字を紹介、生活習慣改善の必要性を説いた。

 また、ある程度以上の腎機能障害が起こると原因の如何にかかわらず症状が進行し末期腎不全となるため、その進行を抑えることが大切になると展開。腎機能障害の進行に影響を与えているのが全身高血圧と尿蛋白であるため、進行を抑制するためには、全身血圧の厳格なコントロールと尿蛋白の減少を目指すべきと指摘した。腎疾患を合併する高血圧の治療では、降圧目標として130/85mmHg未満(尿蛋白1g/日以上では可能なら125/75mmHg未満)を提示した。

 その上で伊藤氏は、「最近の大規模臨床試験で腎機能低下が明らかな例でより強力な腎保護効果が実証されている」とし、血清クレアチニン値やカリウム値への対策、腎臓内科医への相談を条件に「RA系による抑制を行うべき」と強調した。

 伊藤氏が根拠として示した大規模臨床試験は、以下の通り。

・REIN(Ramipril Efficacy in Nephropathy):糸球体濾過率(GFR)が45ml/分以下の群で腎保護効果が明らかになった。
・AASK(The African American Study of Kidney Disease and Hypertension):GFRが40ml/分以下の群で腎保護効果が確認される。
・RENAAL(Reduction of Endpoints in NIDDM with the Angiotensin Antagonist Losartan):血清クレアチニン値が2.0mg/dl以上の群で腎保護効果がより大きい。血清クレアチニン値が基礎値(1.9mg/dl)から倍増した後(3.8mg/dl)でも投与を継続すると末期不全の発症を有意に遅らせた、という結果が出ている。


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