2002.04.01

【ACC '02速報】 心不全・心移植の診断や治療に大きな進歩−−LBCT 2より

 3月19日のスペシャルセッション「Late Breaking Clinical Trials(LBCT) 2」では、心不全の救急や重症〜末期心不全患者、心移植者へのケアを大きく変える潜在力を持った試験結果が発表された。

 左室駆出率(LVEF)が20%台の患者では、体内植え込み型除細動器(ICD)の予防的な植え込みや、左室補助人工心臓(LVAD)の装着が、生命予後を改善することが明らかになった。一方、期待のエンドセリン受容体拮抗薬には、死亡や心不全の悪化を食い止める効果がみられなかった(関連トピックス参照)。

 診断に関しては、B型ナトリウム利尿ペプチド(BNP)が、急性心不全の迅速診断に使えることがわかった。また、心移植後に急性拒絶反応を疑わせる症状が出た場合、「拒絶反応が無い」ことを確かめられる検査も開発された。以下に試験結果を紹介する。

◆ MADIT-2
(the second Multicenter Automatic Defibrillator Trial)

 ICDを予防的に植え込むと、心筋梗塞後にLVEF低下を合併した患者の生命予後が改善されるかを検討した。欧米76施設から1232人を登録、ICD群と通常治療群に3対2の割合で無作為に割り付けた。両群の患者背景はほぼ同じで、65歳以上の患者が約半数を占め、LVEFは平均23%。併用薬の割合も両群で変わらず、アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やβ(ベータ)遮断薬は約7割、ジギタリスは6割弱、アミオダロンは約1割の患者が併用していた。

 3年追跡した時点で、ICD群の生存率は78%、通常治療群は69%となり、ICD群の生存率が通常治療群を有意に上回った(p=0.007)ため試験は中断された。その時点までのデータで、心筋梗塞後に左室機能が低下した人にICDを予防的に植え込むと、2年生存率が相対的に31%改善されることが確かめられた。ICDの効果に年齢や性別による違いはないが、心機能が悪い人ほど有用な傾向がみられた。

◆ ENABLE
(ENdothelin Antagonist Bosentan for Lowering cardiac Events in heart failure)

 慢性心不全患者を対象に、エンドセリン受容体拮抗薬のボセンタンの予後改善効果をみたプラセボ対照二重盲検試験。北米で「ENABLE 1」、欧州で「ENABLE 2」が同一のプロトコールで行われ、両者を併せての解析結果が発表された。対象患者数は総計約1600人で、平均LVEFは25%、4分の3が男性で平均年齢は67歳。ボセンタンの投与量は、最初の4週が62.5mg1日2回、後は125mg1日2回と、肺高血圧(1日量1000〜2000mg)や過去の心不全試験(1日量500〜1000mg)より大幅に用量を減らした。

 死亡などのイベントが600件発生するまで、平均1年半追跡を行ったが、1次評価項目(死亡または心不全の悪化による入院)、2次評価項目(総死亡)のいずれも、プラセボ群とボセンタン群とに有意差はなかった。ボセンタン群では投与開始早期に心不全の悪化が多く、事後解析で体重の増加やヘモグロビン値の低下が確認されており、ごく低用量から投与を開始しても水分の貯留が亢進することが示唆された。

◆ REMATCH
(Randomized Evaluation of Mechanical Assistance for the Treatment of Congestive Heart failure)

 心移植を待つ末期心不全の患者に対し、LVADを装着するケースが増えている。本試験は、1.LVADの装着が本当に生命予後を改善するか、2.どのような状態の患者が最もLVADの恩恵を受けるか−−の2点を検証した。対象患者は、LVEFが25%未満で、ACE阻害薬等を服用しても3カ月以上NYHA心機能分類が4度の状態が続いていたり、強心薬の静注が必要な状態だった。

 2年後の生存率は、LVAD装着者が26%、非装着者が10%で、LVADの装着で少なくとも2年間は生命予後が有意(p=0.001)に改善されることがわかった。また、試験開始時に強心薬の静注を受けていた場合、通常治療では明らかに予後が悪かったが、LVAD装着では静注強心薬なしの人と予後は変わらなかった。このことから、「強心薬の静注が必要な状態の人」で、LVAD装着のメリットが大きいことが明らかになった。

◆ BNP
(Breathing Not Properly Multinational Study)

 慢性心不全患者では血中のBNP値が上昇することが知られているが、本試験では、BNPの迅速検査が、急性期の心不全の診断にも役立つかを評価した。呼吸困難を主訴に救急外来を受診した約1600人を、症状や胸部X線、心エコーなど従来法で仮診断。同時にBNPを測定し、BNPで得られた診断結果と緊急時の仮診断の結果を、最終的に確定した診断結果と比較した。BNPの測定には、蛍光免疫測定法により全血から15分でBNPを定量する「Triage BNP Test」(米国Biosite社製)を用いた。

 BNPが100pg/ml以上を「急性心不全」とすると、感度90%、特異度76%となり、正診率81.1%で心不全を迅速診断できた。一方、緊急時の仮診断の正診率は74.0%だったが、ここにBNP値の情報を加味すると、正診率を81.6%にまで引き上げることができた。

◆ HARDBALL
(Heart Allograft Rejection: Detection with Breath Alkanes in Low Levels)

 呼気中の非環系飽和炭化水素(アルカン)量が、心移植後の急性拒絶反応をどの程度反映するかを調べた。急性拒絶反応の徴候があり、心組織の生検が予定されている心移植者1000人に2分間の呼気試験を行い、微量アルカン量による判定がどの程度正確かを評価した。

 アルカン量検査の「陽性一致率」、つまり検査で「拒絶反応あり」となった人が実際にグレード3以上の拒絶反応を起こしていた割合は、5.7%と低かった。しかし、「拒絶反応なし」となった人に実際に拒絶反応がなかった「陰性一致率」は、97.3%と極めて高かった。

 このことから、アルカン量検査で「拒絶反応なし」となった人では、ほぼ間違いなく拒絶反応が起こっておらず、あらかじめアルカン量検査でスクリーニングすれば無駄な生検を避けられることが明らかになった。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.2.26 エンドセリン受容体拮抗薬、ボセンタンも慢性心不全に有用性認められず

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