2002.03.22

【ACC '02速報】 「LIFE」と「OVERTURE」、予想外の結果に−−LBCT 3より

 3月20日に行われたスペシャルセッション「Late Breaking Clinical Trials(LBCT) 3」では、心不全患者に対する薬物・非薬物療法や、左室肥大(LVH)を合併した高血圧患者への薬物療法、心筋梗塞患者に対する経皮的冠動脈インターベンション(PCI)実施の是非、実施後のケアなど、臨床医に欠かせない最新知見が紹介された。

 LVHを合併した高血圧患者に関しては、「4E」と「LIFE」の二つの試験が発表。「4E」では、他の降圧薬を併用して血圧を下げれば、アルドステロン阻害薬にアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬に匹敵する肥大退縮効果があることがわかった。「LIFE」では、他の降圧薬併用下で、アンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬がβ(ベータ)遮断薬よりも複合予後を絶対値で約2%改善することが明らかになったが、LVH退縮との作用機序から予測される心筋梗塞ではなく、脳卒中の予防効果が主体という意外な結果となった。

 PCIに関しては、血栓溶解療法との比較試験「DANAMI-2」で、20分以内の移送が可能な条件ならばPCIの方が予後が優れることが判明。また、PCI後の患者は高率で心疾患を再発するが、スタチンで低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値を100mg/dlにまで下げれば、心疾患死などを予防できることが「LIPS」試験で示された。

 心不全については、新型の心室補助装置「InSynch ICD」で、体内植え込み型除細動器(ICD)単独よりも心不全症状などが改善することがわかった。一方、ACEと中性エンドペプチダーゼ(NEP)の両者を阻害する期待の新薬、オマパトリラットに関する「OVERTURE」試験では、同薬にACE阻害薬並みの予後改善効果しかないことが判明。「有意差なし」のスライドが提示された後、席を立つ聴衆が目立ち、失望の大きさをうかがわせた。試験結果を以下に紹介する。

 なお、このセッションの発表内容は、Online ACC '02で3月28日以降にオンデマンド提供される予定だ(関連トピックス参照)。

◆ InSynch ICD

 「InSynch ICD」(Model 7272、米国Medtronic社製)という、心室同期機能と除細動機能を併せ持つ心室補助装置の有用性を調べた。中等度〜重度の心不全患者362人に同装置を植え込み、186人では両機能を稼動、176人では除細動機能のみを稼動させて症状などを比較した。対象者の平均年齢は68歳、4分の3が男性で、平均左室駆出率(LVEF)は21%、心電図のQRS間隔の平均値は164ミリ秒。

 三つの一次評価項目のうち、6分間の歩行距離には両群で差がなかったが、NYHA心機能分類で評価した心機能と生活の質(QOL)は、心室同期機能を稼動させた群で改善度が有意に高かった。死亡率は両群でほぼ変わらず、同装置がICDと同程度の安全性で、ICD単独より心不全症状やQOLを改善し得ることがわかった。

◆ 4E
(Eplerenone, Enarapril and Eplerenone/Enarapril Combination Therapy in Patients with Left Ventricular Hypertrophy)

 LVHを合併した高血圧患者約200人を対象に、アルドステロン阻害薬のエプレレノンと、ACE阻害薬のエナラプリルの単独・併用投与の効果をみた試験。対象患者を3群に分け、1.エプレレノン200mg、2.エナラプリル40mg、3.エプレレノン200mg+エナラプリル10mg−−を連日投与して9カ月後のLVHの程度を比較した。最終的な解析対象者は155人で、平均年齢は59歳、6割が男性で、左室重量の平均値は189g、当初血圧は163/98mmHg。

 必要に応じて他の降圧薬を併用する条件で、エプレレノン群(降圧幅:23.8/11.9mmHg)はエナラプリル(同:24.7/13.4mmHg)と同程度血圧が下がった。左室重量はエプレレノン群で14.5g、エナラプリル群で19.7g減少しており、エナラプリルに対するエプレレノンの非劣性が示された。なお、両薬を併用すると、エプレレノン単独よりも、収縮期降圧や左室重量を減少する効果が大きかった。

◆ LIFE
(Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension study)

 LVHを合併した高血圧患者を対象に、A2受容体拮抗薬のロサルタンの心予後改善効果を検討した。対照薬はβ遮断薬のアテノロールで、対象患者数は約9100人とこの種の試験では最大。平均年齢は66.9歳で女性比率は54%、血圧の平均値は174.4/97.8mmHg。必要に応じ他の降圧薬を追加する条件で、追跡期間(中央値4.8年)中に両群とも血圧が約145/81mmHg程度にまで下がった。

 1次評価項目は脳卒中、心筋梗塞と心疾患死を合わせた複合予後で、血圧やLVHの重症度などで補正した後も、絶対値で約2%、相対的には13.0%、ロサルタン群で到達率が低くなった(p=0.021)。

 複合予後の改善に大きく影響したのは脳卒中で、発症率はロサルタン群で相対的に24.9%低かった(p=0.001)。サブ解析では糖尿病合併者でこうした予後改善効果が特に大きく、糖尿病の新規発症者もロサルタン群で相対的に25%少ないなど、興味深いデータも得られた。試験結果は、次号のLancet誌(3月23日号)に掲載される。

◆ DANAMI-2
(Danish Multicenter Randomized Trial on Thrombolytic Therapy Versus Acute Coronary Angioplasty in Acute Myocardial Infarction)

 急性心筋梗塞患者約1500人を対象に、血栓溶解療法とPCIとを無作為比較したデンマークの多施設共同試験。デンマーク国内でPCIを施行できる医療施設は5カ所のみで、それ以外の病院に入院した患者(全体の3分の2強)がPCI群に割り付けられた場合は、PCIを実施できる施設に移送した。平均年齢は63歳で4分の3が男性、8割強が前壁梗塞。発症から来院までは平均2時間で、来院後50分弱で血栓溶解療法、約1時間半でPCIが行われた。移送を要した患者の平均移送時間は約20分。

 1次評価項目は30日後の死亡と再灌流療法の施行、後遺症の残る脳卒中の発症とを併せた複合予後。到達率はPCI群が8.0%と、血栓溶解療法群の13.7%を大きく引き離した(p=0.0003)。以上から、20分程度で移送できるなら、移送してでもPCIを行った方が、血栓溶解療法を行うよりも予後が改善することが明らかになった。

◆ LIPS
(Lescol Intervention Prevention Study)

 PCIを受けた成人患者に脂質低下薬のフルバスタチンを投与すると、心疾患の再発を防げるかを検討したプラセボ対照無作為化試験。約1700人のPCI受療者を無作為に2群に分け、フルバスタチン80mgまたはプラセボを連日投与して3〜4年間追跡した。対象患者の平均年齢は60.0歳で男性が8割強、原疾患は約半数が不安定狭心症、4割が安定狭心症で、残りが無症候性虚血。低比重リポ蛋白(LDL)コレステロール値は平均132mg/dlで、実薬群では100mg/dl前後にまで下がった。

 1次評価項目は心疾患死や非致死性心筋梗塞などを合わせた主要心イベント率(MACE)で、1年目以降に両群の差が開き、最終的にフルバスタチン群の方が絶対値で5%強、相対的には22%(p=0.0127)低くなった。

 MACEの構成要素の中では、有意差はないものの、心疾患死への効果が大きい傾向があった(相対危険率:0.53、95%信頼区間:0.27〜1.05)。

◆ OVERTURE
(Omapatrilat Versus Enalapril Randomized Trial of Utility in Reducing Events)

 NYHA心機能分類が主に2〜3度の心不全患者5770人を対象に、血管ペプチダーゼ阻害薬のオマパトリラットの予後改善作用を、ACE阻害薬のエナラプリルと比較した。ジギタリスや利尿薬など他の心不全治療の継続下で、オマパトリラットまたはエナラプリルを無作為に投与。エナラプリルは初期量を2.5mg1日2回、維持量を5mg1日2回とし、オマパトリラットは初期量を10mg1日1回、維持量を20mg1日1回とした。対象患者の平均年齢は63歳で8割が男性、LVEFは23.5%で、半数強が虚血性心不全だった。

 両群合わせた死亡数が850人に達するまで追跡したが、1次評価項目(死亡または心不全の悪化による入院)には有意差が出なかった。ACEとNEPの両方を阻害するオマパトリラットには、心不全患者の死亡や心不全の悪化を防ぐ作用はあるが、その大きさはACEのみを阻害するエナラプリルと変わらないことが明らかになった。

■ 関連トピックス ■
◆ 2002.3.18 ACC '02速報】「ACC '02 LIVE」をネットでライブ中継、サマリー付きオンデマンド放映も4月に

■ 参考トピックス ■
◆ 2002.2.26 ACCで報告される「LIFE試験」のサブ解析、本試験の発表前にCirculation誌で早期公開

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