2002.03.13

転移性大腸癌に対する5-FU/FA療法、「夜間投与」で治療効果が倍増

 薬を夜間に投与することで、フルオロウラシル(5-FU)と葉酸(FA)とを併用する5-FU/FA療法の治療効果が倍増することが明らかになった。転移性大腸癌患者を対象に、フランスで行われた第2相試験による。生体リズムを利用するクロノセラピー(時間調整静注療法)が、癌治療分野で“市民権”を得る大きな契機となりそうだ。研究結果は、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌3月1日号に掲載された。

 クロノセラピーは、癌細胞は夜間に、正常細胞は昼間に盛んに分裂するという生体のリズムを利用して、夜間に抗癌剤を投与する化学療法。抗癌剤は分裂中の細胞に作用するため、化学療法の治療効果を上げるだけでなく、副作用を軽減できるという特徴がある。抗癌剤の点滴は夜間に行われるため、患者にとっては昼間の時間が自由になり、生活の質(QOL)が維持できる治療法でもある。

 臨床試験の対象は、転移性大腸癌患者100人。全員、手術切除が不能で、化学療法の治療歴はない。5-FU/FAの投与は午後10時から午前10時にかけて行われた。5-FUの投与量は通常より大量の、1日当たり900〜1100mgとし、FAを1日当たり150mg併用した(いずれも体表面積1m2当たり)。投与スケジュールは5-FU/FAを連続4日間投与後、10日間休薬するというもの。これを1コースとし、100人で総計925コース(中央値9コース)の治療を行った。

 平均3.5年間追跡したところ、客観的な奏効率(ORR)は41%となり、うち20人の患者では腫瘍の切除が可能になった。患者の生存期間の中央値は17カ月で、2年生存率は28%、3年生存率は19%だった。一方の有害事象は、悪心・嘔吐(14%)、粘膜炎症(26%)、手足症候群(38%)、下痢(21%)がみられたが、副作用による死亡はなかったという。

 転移性大腸癌に対する化学療法では、一般に5-FU/FA療法が行われるが、通常の、つまり昼間に投与した場合の治療成績は、ORRで20%前後に留まっている。

 今回の研究結果が示唆するのは、同じ薬剤の組み合わせでも、夜間に投与することで、治療に反応する患者を倍増できるということ。ORRで41%という成績は、5-FU/FAにオキサリプラチンを併用した場合と遜色がなく、こうした「投与法の工夫」で癌の治療成績を向上できた好例と言える。

 なお、今回の研究では患者のQOLについての検討はなされていないが、クロノセラピーは夜間治療であり、患者が昼間に普通の生活ができるのも大きなメリットだ。クロノセラピーは、「癌と共に生きる」患者を支える大切な治療法となるだろう。

 この論文のタイトルは、「Phase II Trial of Chronomodulated Infusion of High-Dose Fluorouracil and l-Folinic Acid in Previously Untreated Patients With Metastatic Colorectal Cancer」。アブストラクトは、こちらまで。(張辛茹、医療ジャーナリスト)

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