2002.03.11

【臨床内分泌代謝Update速報】 今もある乳児のくる病、食事制限や日光照射不足によるビタミンD欠乏が原因に

 くる病は決して過去の病気ではない−−。岡山大学大学院医歯学総合研究科小児科学の田中弘之氏は、3月10日の指定講演「ビタミンD欠乏症の診断と治療」で、同氏が最近経験した乳児のくる病症例を紹介。食事制限や日光浴の忌避など、近年の育児環境の変化で、くる病が“復活”する素地が整いつつあることに注意を喚起した。

 田中氏が経験した症例は、1歳11カ月の女児。アトピー性皮膚炎があり、家族の判断で、離乳食を開始した頃から卵や乳製品の除去を続けていた。つかまり立ちをする10カ月頃からO脚が現れ、歩き始めた1歳4カ月頃からO脚がひどくなったため、病院を受診した。

 女児の膝と膝の間は9cm離れており、家族は「O脚」だと思っていた。しかし、肋骨に念珠状の変化があり、脊柱も変形。典型的なくる病の症状を示していたのだ。内分泌検査では、血中のビタミンD値などが低く、ビタミン欠乏性のくる病であることがわかった。

 この女児の場合、活性型ビタミンDを多く含む卵の除去に加え、皮膚炎があるために親が子供を屋外に連れ出す機会が少なく、日照不足による内因性ビタミンDの欠乏もあったという。骨が成長する乳幼児期は、成人の4倍のビタミンDを必要とする。最近は皮膚癌などのリスクを避けるため、子供には余り日光浴をさせないことが新しい常識になりつつあるが、ビタミンDの合成に不可欠な、適度な日光浴の必要性についても啓蒙を進める必要が出てきたと言えそうだ。

 なお、ビタミンD欠乏性くる病では、教科書的には血中のカルシウム値とリン値が低くなるとされている。しかし、田中氏らの検討では、カルシウム値は低い症例が多いもののリン値はむしろ高値。これは、カルシウム値やリン値が食事の影響を受けやすいためで、「ビタミンD欠乏症の診断には、(内因性ビタミンDの状態を直接反映する)25-OHビタミンD(25-OHD)の測定が必要」と田中氏は強調した。

 ただし、25-OHD検査は保険収載がなされていない。また、確定診断のためにはビタミンD製剤を経口投与し、カルシウム値やリン値、副甲状腺ホルモン(PTH)値の変化を観察する必要があるが、わが国ではビタミンD2(外来性ビタミンD)製剤の販売が中止されており、手に入らない状態だ。こうした状況を受け、田中氏は「25-OHD検査の保険収載と、D2製剤の製造・販売が復活することを強く期待したい」と結んだ。

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