2002.03.10

【臨床内分泌代謝Update速報】 難治性の重症高血圧、「腎動脈狭窄」の鑑別が肝要に

 京都大学大学院医学研究科臨床病態医科学(第2内科)の藤澤武氏らは、降圧薬を複数服用しても収縮期血圧が200mmHg前後と、他院で治療に苦慮していた高血圧患者に、両側性の腎動脈狭窄があることを診断。ステント留置術を行ったところ、血圧が正常値に戻り腎機能も改善したことを、3月9日のポスターセッションで報告した。治療の過程で体液性ホルモンの興味深い変動もみられたという。腎血管性高血圧は難治性高血圧の5%程度を占めると考えられており、「複数の降圧薬を服用しても血圧コントロールがうまくいかない患者は、泌尿器科や内分泌科などに紹介し、精査を勧めてほしい」と藤澤氏は話している。

 患者は63歳の女性。元々低血圧だったが、10年前に突然高血圧を発症した。降圧薬を複数服用したが、収縮期血圧が160〜180mmHgと血圧コントロールが悪く、ここ1〜2年は収縮期血圧が200mmHg前後にまで悪化したため同大病院に紹介入院となった。

 藤澤氏らが腹部のCTを撮影したところ、両側の腎動脈に石灰化がみられ、軽度の腎萎縮もあることが判明。磁気共鳴イメージング(MR)法による血管撮影(MRアンギオグラフィー)で、右側の腎動脈が99%、左側が90%、それぞれ狭窄していることが確かめられた。

 入院中の血圧は、カルシウム拮抗薬と利尿薬を中心とする降圧薬を5剤併用しても152/76mmHgで、心不全や腎機能障害も合併していた。そこで、両側の腎動脈狭窄を2週間間隔で治療(ステント留置)したところ、血圧は降圧薬を飲まなくても124/59mmHgと正常化し、心不全が解消、腎機能の改善もみられたという。

 なお、この患者では入院当初、体内のナトリウムを排泄させる血管収縮ホルモンのヒト心房性ナトリウム利尿ペプチド(hANP)値が高く、腎臓内の灌流圧を高める昇圧ホルモンのレニン値も高かったが、カプトプリル負荷による血圧低下がみられなかったため、「体液貯留によるレニン非依存性高血圧」と診断された。ところが、まず左側の腎動脈狭窄を治療したところ、hANP値は大幅に低下、レニン値もやや低下したがアルドステロン値が上昇し、カプトプリル負荷による血圧低下がみられる「レニン依存性高血圧」へと病態が変化した。

 このデータは、腎動脈の狭窄部位が両側の場合と片側とで、二次性高血圧の病態が異なる可能性を示唆するものだ。hANPが高値の場合、アルドステロンが直接抑制される可能性もあるという。なお、両側の治療後、これらの体液性ホルモンは正常化している。

 ちなみに、この患者では治療前に別の医療機関でアンジオテンシン2(A2)受容体拮抗薬を処方された際、急激に腎機能が悪化している。これは、腎動脈狭窄に対する代償作用として、A2で輸出細動脈を収縮させて糸球体濾過圧を保持していたため、レニン−アンジオテンシン系の抑制薬により輸出細動脈が拡張して腎機能が悪化したと考えられるという。レニン−アンジオテンシン系の抑制薬で腎機能が悪化した場合、原因として腎動脈狭窄も考慮する必要がありそうだ。

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