2002.03.09

【臨床内分泌代謝Update速報】 提供卵子でターナー女性が出産、国内で初の症例報告

 渡米して卵子提供を受け、体外受精・胚移植で妊娠・出産したターナー症候群女性の症例が、3月9日のポスターセッションで報告された。提供卵子を使った不妊治療は、厚生労働省や日本産科婦人科学会が許容する方向で検討中だが、現時点では第三者から卵子などの提供を受ける「非配偶者間の生殖補助医療」は国内での実施が認められていない。そのため、以前から海外で卵子提供を受けるケースがあったが、国内の学会で症例が報告されたのは恐らく初めてだ。

 この症例報告を行ったのは、小川クリニックの小川正道氏ら。症例は33歳の女性で、11歳の時に低身長を主訴に小児科外来を受診、15歳時に無月経のため染色体分析を受けてターナー症候群であるとの診断が確定していた。

 ターナー症候群は女性のみに生じる性染色体異常で、2本あるX染色体のうち1本が無かったり、一部が欠けていることで、低身長や低骨量、卵巣の機能不全など様々な症状が起こる。頻度は決して少なくなく、日本人女性では、およそ1000人に一人の割合だ。染色体の欠損部分によって症状は異なるが、この女性の場合は卵巣の形成不全があって、自らの卵子では子供を持てない状態だった。

 ただし、この女性の子宮はほぼ正常であり、卵子の提供を受ければ妊娠が可能だと考えられたため、32歳の時に渡米。カウフマン療法(卵胞ホルモンを1週間投与し、続いて卵胞ホルモンと黄体ホルモンを2週間投与して1週間休薬する卵巣機能不全の治療法)を続けながら卵子の提供を受け、夫の精子を用いた受精卵(胚)の初回移植で33歳時に妊娠。双子を出産している。

 小林氏によると、卵子提供による不妊治療にかかった費用は日本円に換算して約500万円。ただし、渡航費・宿泊代に約70万円、弁護士や通訳費用、国際電話代に約230万円がかかっており、卵子ドナーへの謝礼(36万円)を含めても医療費としては200万円程度だ。ドナーから提供された34個の卵子のうち25個が受精したが、今回移植に用いなかった受精卵を凍結保存する費用は年間120ドルだという。

 今回のケースでは1回の胚移植で妊娠したが、小林氏は「(子宮内膜を周期的に増殖・剥離させる作用がある)カウフマン療法が、前治療として有意義だったのでは」と推察。女性から出産後に届いた手紙の一部を紹介し、「提供卵子で子供を持ったことで、ターナー女性の生活の質(OQL)は大きく改善された。わが国でも早急に、卵子の提供システムが確立されることが望まれる」と話した。

 非配偶者間の生殖補助医療については、厚生科学審議会先端医療技術評価部会の「生殖補助医療技術に関する専門委員会」が、2000年12月に「精子・卵子・胚の提供等による生殖補助医療のあり方についての報告書」を発表。代理懐胎を除く非配偶者間の生殖補助医療(非配偶者間人工授精(AID)、非配偶者間体外受精、提供胚移植)を原則として認めるもので、この報告書を受け厚生労働省は、昨年7月から厚生科学審議会生殖補助医療部会で審議を開始した。

 今年秋までに、実施条件や施設基準、管理体制などの整備に向けた具体案をまとめる予定だ。同部会の審議内容については、厚生労働省ホームページの「厚生労働省関係審議会議事録等」で議事録が公開されている。

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