2002.03.08

腎移植の急性拒絶反応抑制効果、タクロリムスがシクロスポリン新製剤を凌駕

 腎移植を受けた患者560人を対象に、免疫抑制薬のタクロリムス(わが国での商品名:プログラフ)と、シクロスポリンのマイクロエマルジョン製剤(わが国での商品名:ネオーラル)とを比較した無作為化試験で、急性拒絶反応の発生率がタクロリムス群でほぼ半減することがわかった。研究結果は、Lancet誌3月2日号に掲載された。

 タクロリムスとシクロスポリンはいずれも、腎移植の急性拒絶反応を抑制する基本的な治療薬。1990年代に行われた大規模臨床試験で、タクロリムスの方が、従来型のシクロスポリン製剤(わが国での商品名:サンディミュン)よりも急性拒絶反応の抑制効果が高いことが報告されている。しかし、シクロスポリンの薬液を直径10〜100nm以下の粒子状にして溶液中に分散し、吸収性を高めて血中濃度を安定化した「マイクロエマルジョン製剤」については、タクロリムスと効果を直接比較した試験は行われていなかった。

 オーストリアInnsbruck大学病院移植手術部門のRaimund Margreiter氏らは、タクロリムスとシクロスポリン新製剤との比較を目的に、欧州7カ国の50移植施設が参加する多施設共同オープン試験を実施。血液型が一致した腎臓を移植された患者560人を無作為に2群に分け、免疫抑制薬のアザチオプリン(わが国での商品名:イムランなど)とステロイドの併用下で、両薬の免疫抑制効果を比較した。一次評価項目は急性拒絶反応(生検で確定診断)を起こした患者比率及び急性拒絶反応を起こすまでの時間とした。追跡期間は6カ月。

 対象患者(レシピエント)はほぼ全員が白人で、移植腎の死体腎比率はタクロリムス群が95.5%、シクロスポリン新製剤群が97.0%。レシピエントや臓器提供者(ドナー)の平均年齢、レシピエントの原疾患、ヒト白血球抗原(HLA)の不一致率など、主な患者背景に有意差はなかった。なお、タクロリムス群で一人、シクロスポリン新製剤群で二人は、治療を受けなかったため解析から除いた。

 その結果、タクロリムス群(286人)で急性拒絶反応を起こした患者の割合は19.6%、シクロスポリン新製剤群(271人)では37.3%となり、危険率の差は17.7%(95%信頼区間:10.3〜25.1、p<0.0001)と大きなものとなった。ステロイド抵抗性の急性拒絶反応の比率も、タクロリムス群で9.4%と、シクロスポリン新製剤群(21.0%)よりも有意に低くなった。ただし、移植腎の生着率や生着した腎臓の機能には、両群で有意差はなかった。

 副作用に関しては、両群で比率に差はないが、シクロスポリン新製剤の投与を受けた患者で高血圧と高コレステロール血症、タクロリムスでふるえと低マグネシウム血症が多い傾向があった。

 以上から研究グループは、生着率などの観点では両群に違いはないものの、「腎移植の急性拒絶反応の抑制という点では、タクロリムスの方がシクロスポリン新製剤よりも優れている」と結論付けた。

 さらに研究グループは、シクロスポリンの副作用として生じる高血圧や高コレステロール血症は、心血管疾患の危険因子であり、同疾患の予防という観点でもタクロリムスの方が望ましいと示唆している。わが国でも毎年、約700人の腎不全患者が腎移植を受けており、予後に影響を与え得る心血管疾患の発症予防も重要な課題の一つだ。心血管疾患の発症率を含め、長期的な予後を評価項目とした臨床試験に期待したい。

 この論文のタイトルは、「Efficacy and safety of tacrolimus compared with ciclosporin microemulsion in renal transplantation: a randomised multicentre study」。アブストラクトは、こちらまで。

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