2002.03.06

吸入ステロイド、幼児への使用で成長抑制が確認

 喘息に罹患している1〜3歳の幼児を対象としたプラセボ対照二重盲検試験で、吸入ステロイドにわずかながら下肢の成長を抑制する作用があることがわかった。わが国では原則として幼児を対象とした吸入ステロイド治療は行われていないが、幼児用のステロイド吸入器や専用の吸入ステロイド薬の開発が進められており、こうした全身性の副作用に関する研究動向は注目を集めそうだ。研究結果は、Pediatrics誌3月号のウェブサイト上で電子出版された。

 吸入ステロイドは、喘息治療において、気道の炎症を抑える「長期管理薬」と位置付けられている。1995年に米国国立心肺血液研究所(NHLBI)と世界保健機関(WHO)の協力の下で作成された、喘息診療の国際ガイドライン「Global Initiative For Asthma」(GINA)では、軽症間歇型喘息の患者を除き、全て(軽症〜重症の持続性喘息)の患者に対して吸入ステロイドを用いた治療を推奨。4歳以下の乳幼児に対しても、5歳以上の患者よりも少ない量の吸入ステロイドを、専用の吸入器を用いて使用すべきとしている。

 ステロイドは副腎機能を抑制することが知られているが、吸入などの外用では、こうした全身性の作用はほとんど起こらないとされる。学童を対象とした研究でも、吸入ステロイドに成長抑制作用はみられないと報告されている。

 デンマークCopenhagen大学病院小児科のJacob Anhoj氏らは、学童よりも成長の早い幼児で、吸入ステロイドの成長抑制作用を調べた研究がない点に着目。喘息にかかっている1〜3歳の幼児40人(うち女児20人、平均年齢2.4歳)を対象とした臨床試験を行った。

 臨床試験の形式は、専用の乳幼児用吸入器がある2種の吸入ステロイドとプラセボの、計3種類の薬剤を、4週間ごとに無作為に吸入させるクロスオーバー試験。成長への影響は、下肢の長さを100分の1センチまで測れるネモメーターという装置を使って3週間隔で測定し、1日当たりの成長速度を指標に評価した。試験を完遂したのは25人だが、解析は脱落者も含めたITT(intent-to treat)形式で行った。

 その結果、プラセボを服用した期間の下肢の成長速度は、1日当たり85μm(0.085mm)。ところが、ブデソニド(1日量400mg)服用中は45μm(0.045mm)、プロピオン酸フルチカゾン(1日量400mg)服用中の場合は34μm(0.034mm)となり、いずれもプラセボ服用中より有意に成長抑制が起こっていることがわかった。2種の吸入ステロイド薬の成長抑制作用に有意差はなかった。なお、発熱や咳など、吸入治療による副作用の頻度は、実薬2種とプラセボとで有意差はなかった。

 研究グループは、下肢の成長速度にみられた差は、副腎機能の抑制作用を反映していると指摘。乳幼児に吸入ステロイドを安全に使用するためにも、喘息の治療効果に加え、副腎機能などを評価する臨床試験が必要だと示唆している。

 この論文のタイトルは、「Systemic Activity of Inhaled Steroids in 1- to 3-Year-Old Children With Asthma」。現在、こちらで全文を閲読できる(リンク先の運営次第で変更になることがあります。ご了承下さい)。GINAガイドラインは、GINAプロジェクトのホームページから、医師用・患者用のガイドラインの入手が可能だ。

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