2002.02.15

世界初、黄色ブドウ球菌ワクチンで菌血症発症率が半減

 院内感染の主要な原因菌の一つである黄色ブドウ球菌に対するワクチンが、透析患者1800人を対象としたプラセボ対照無作為化臨床試験で予防効果を実証した。投与後3〜40週で57%、菌血症の相対発症リスクが低下したという。黄色ブドウ球菌ワクチンの、感染症予防効果が示されたのはこれが初めて。研究結果は、New England Journal of Medicine(NEJM)誌2月14日号に掲載された。

 黄色ブドウ球菌は鼻腔や皮膚の常在菌で、健康な人が感染しても大半は無症状だが、免疫力の弱っている人の体内に入ると、肺炎や菌血症など深刻な病態を引き起こすことがある。抗菌薬に対する耐性が生じやすい点も大きな問題で、入院患者から分離される黄色ブドウ球菌のうち、メチシリン耐性のもの(MRSA)の割合は米国で30%前後。日本の病院では実に70〜80%を占めるという。

 黄色ブドウ球菌は、病院内ではしばしばカテーテルを介した感染を引き起こす。発生率は中心静脈カテーテル(高カロリー輸液など)で10%、透析でも年率3〜4%と見積もられており、予防対策が急務の課題となっていた。

 米国Kaiser Permanenteワクチン研究センターのHenry Shinefield氏らは、黄色ブドウ球菌の周囲を覆う多糖類(ポリサッカライド)から作ったコンジュゲート・ワクチン「StaphVAX」(米国Nabi社製)を用い、透析患者に対する予防効果を調べた。対象は、8週以上血液透析を受けている18歳以上の腎不全患者1804人。無作為に2群に分け、ワクチンまたは生理食塩液を1回投与した。

 その結果、投与後3〜40週で、プラセボ群(906人)では26人が菌血症を発症。ところが、ワクチン投与群(892人)で菌血症を発症したのは11人と有意に少なく、相対リスクが56%(95%信頼区間:10〜81%、p=0.02)減少することが判明した。主な副反応は局所の紅班や痛み、頭痛、筋痛などだが、いずれも軽微で2日以内に解消したという。

 ただし、ワクチンによる予防効果は40週以降から低下し、観察期間全体(3〜54週)では相対リスク低下率は26%(p=0.23)となってしまった。また、ワクチンを投与しても1割の患者では抗体価が上昇しなかった。

 このように、ワクチンの投与量や再接種のタイミングなど、実用化には課題も残るが、手洗いや皮膚消毒などの防御策だけでは、黄色ブドウ球菌のカテーテル感染を100%防ぐことができないのも事実。カテーテル感染症に対する有力な予防策の一つとして、今回の成績は大きな注目を集めそうだ。

 この論文のタイトルは、「Use of a Staphylococcus aureus Conjugate Vaccine in Patients Receiving Hemodialysis」。アブストラクトは、こちらまで。この件に関する米国国立衛生研究所(NIH)のニュース・リリースはこちら、Nabi社のニュース・リリースはこちらまで。

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