2002.02.08

【日本胃癌学会速報】 意外と実施少ないH. ピロリ菌の除菌療法、1月当たり3万5000人程度か

 2000年11月に、まさに「満を持した」形で保険適用がなされたヘリコバクター・ピロリ(H. ピロリ菌)の3剤併用除菌療法が、臨床現場には思いのほか普及していないことがわかった。兵庫医科大学第4内科の福田能啓氏は、除菌療法に用いるプロトンポンプ阻害薬(PPI)の処方量や、H. ピロリ菌の検査法の一つである尿素呼気試験の施行回数などから、除菌療法の実施数を推定。1月当たりの実施人数として「3万5000人」との予測値をまとめた。研究結果は、2月7日の特別企画「ピロリ菌の夕べ」で報告された。

 H. ピロリ菌の除菌療法は、わが国では消化性潰瘍(胃潰瘍と十二指腸潰瘍)がある患者に限り保険適用が認められている。PPIのうちランソプラゾール(商品名:タケプロン)30mgと、抗菌薬のアモキシシリン(商品名:パセトシン、サワシリン、アモリンなど)750mg、クラリスロマイシン(商品名:クラリス、クラリシッド)200mgを3剤同時に1日2回、7日間服用すれば、9割の患者で除菌ができるとされている。

 しかし、主にクラリスロマイシンに対する耐性菌の増加のため、除菌率が期待されたほど高くない点に加え、除菌に失敗した場合の「二次除菌薬」については、保険適用がないなどの理由で現場では使える状態になっていない。さらに、除菌療法に伴う下痢やアレルギー症状、血小板減少症などの副作用も、除菌療法の普及をさまたげる要因となっていた。

 福田氏は、わが国で販売されているPPI3剤のうち、1剤だけが除菌療法の適応がある点に着目。除菌療法と逆流性食道炎の両方に適応が拡大されたランソプラゾールの処方量から、逆流性食道炎のみに適応が拡大されたオメプラゾール(商品名:オメプラール、オメプラゾン)の処方量を引き、「除菌療法」の効果でランソプラゾールの売上がどの程度伸びたかを調べた。

 さらに、兵庫県下の医療機関に対してアンケートを行い、兵庫県および全国での尿素呼気試験の施行回数の推移も加味して、兵庫県および全国での除菌療法実施数を予測した。

 その結果、保険適用から3カ月後では1月当たり2万5000人、6カ月後で3万4000人、12カ月後で3万6000人と、除菌療法を受けた患者数が緩やかに伸びていると考えられることが判明。現時点では1月当たり、約3万5000人の消化性潰瘍患者が、除菌療法を受けていると推測できるとした。

 ただし、わが国における消化性潰瘍患者は、受療者だけでも胃潰瘍と十二指腸潰瘍とを合わせて約100万人おり(厚生労働省「平成11年患者調査」)、1カ月で3〜4万人とのペースでは「胃癌の発症予防などに対するマスとしての効果は出にくい」と福田氏は指摘。アンケートで除菌療法を行わない理由として「除菌には興味が無い」と応えた開業医が多かったことから、一般市民も含め、除菌療法に対する何らかのプロモーションが必要だと強調した。

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