2002.01.29

【日本心療内科学会速報】 女性のストレス性下腹部痛、「骨盤内うっ血症候群」に注目を

 下腹部が重苦しく痛むが、鎮痛薬を飲んでもあまり効かない。胃や腸、子宮や卵巣を調べても異常がみられない−−。1月27日に行われたシンポジウム5「プライマリケアにおける心身医療の実践」では、朋佑会札幌産科婦人科副院長の佐野敬夫氏が、「不定愁訴」として片付けられることの多いこうした症状が「骨盤内うっ血症候群」に特徴的なものである点に注意を喚起。9割の患者に漢方薬が奏効することを紹介した。

 骨盤内うっ血症候群は、下腹部に痛みがあるが、痛みの原因となるような器質的な疾患や炎症などの所見が認められない病態を指す。下腹部痛を訴える女性の半数はこの病態に当てはまり、頻度としては決して少なくないが、原因がわからないだけに多くの医療機関では積極的な治療が行われてこなかった。

 佐野氏らは、下腹部に痛みを訴えて来院したが、炎症や器質的疾患がみられない女性74人に内診を行い、骨盤内のどの部位に圧痛があるかを調べた。すると、子宮や卵巣などの部位を押すと痛む人は全体の2割弱で、8割強の人では骨盤壁や腹壁に圧痛を感じていることがわかった。

 また、圧痛の部位には左右差があり、左側を痛がる人の方が有意に多かった。佐野氏によると、「骨盤内の血管は左側のほうが長く、走行も複雑になっているため、左側の方がうっ血が生じやすい」ことを反映している可能性があるという。さらに、痛みが起こるタイミングは、就寝中や起床直後など、長時間じっとしている時に多いこともわかった。

 これらの特徴から、佐野氏らは、骨盤内うっ血症候群が東洋医学の「お血」に相当する病態だと考察。漢方薬を中心とした治療を行ったところ、9割の患者で、漢方薬を1〜2週間服用すると症状が軽快することが確認できた。

 最も多くの患者に有効だったのは「桂枝茯苓丸」で、7割弱の患者で症状が軽減した。痛みが強く便秘気味の人では「桃核承気湯」、痛みは比較的弱いが貧血気味でむくみやすい人には「当帰芍薬散」の処方で効果がみられた。一方、残りの1割の患者では、漢方薬だけでは症状が改善せず、抗うつ薬や抗不安薬の併用が必要だったという。

 過敏性腸症候群(IBS)や機能性胃腸症(functional dyspepsiaまたはnon-ulcer dyspepsia;NUD)、不安誘発性不整脈など、心身のストレスによって引き起こされる疾患は少なくない。プライマリ・ケアの現場では、器質的疾患を検索・除外することに加え、こうした「原因不明の疾患」に対しても何らかの対症療法を行うことが大切となりそうだ。

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