2002.01.29

【日本心療内科学会速報】 女性に多いIBS、セロトニン関連の遺伝子多型が関与か

 ストレスがかかると下痢や便秘を繰り返す、過敏性腸症候群(IBS)は女性に多い疾患として知られているが、この性差に脳内神経伝達物質の一つであるセロトニン(5-HT)関連の遺伝子多型が関与する可能性があることがわかった。多型の頻度に男女差はないが、IBSの引き金となるとされる抑うつや不安については、女性でのみ多型との相関がみられたという。研究結果は、東北大学大学院医学系研究科人間行動学の福土審氏が、1月26日のシンポジウム2「消化器心身症の薬物治療」で報告した。

 女性でのみ抑うつや不安傾向との相関がみられたのは、セロトニントランスポーターのプロモーター領域にある遺伝子多型。セロトニントランスポーターは、神経終末から放出されたセロトニンを、再び神経終末内に取り込む役割を果たしている。抑うつや不安に対する効果があるとされる、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)の作用点でもある。

 このセロトニントランスポーター遺伝子の上流には、発現を調節するプロモーター領域があり、人によって長さが違うことがわかっている。長いタイプ(l型)と短いタイプ(s型)に大別でき、l型の人ではセロトニントランスポーターの発現量が、s型の人の1.4〜2倍に達する。2対の遺伝子の両方がl型である「l/l型」は日本人にはまれで、大半がs/s型またはs/l型であり、「日本人の慎み深い国民性を反映している」との説もあるほどだ。

 福土氏らは、日本人男性87人と、日本人女性84人について、この遺伝子多型を検査。同時に、抑うつ傾向や不安傾向を調べる心理検査を受けてもらい、遺伝子多型との相関を調べた。

 すると、男性ではs/s型の人(54人)とs/l型の人(33人)とで、心理状態に差異は認められなかった。ところが、女性ではs/l型の人(37人)の方が、s/s型の人(47人)よりも抑うつ傾向や不安傾向が高いことが判明した。

 発表後の質疑応答では、フロアから「SSRIの副作用で生じる吐き気も、女性に多いとの印象があるが、今回の結果との関連は考えられるか」との質問が出された。これに対し、福土氏は「作用・副作用共に女性ホルモンが関連している可能性があり、閉経前か閉経後かでも恐らく違いがあると考えられる。セロトニンなどのモノアミンによる神経伝達の性差について、今後も継続的に検討していきたい」と締めくくった。

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