2002.01.27

【日本心療内科学会速報】 難治性NUDに三環系抗うつ薬が奏効

 潰瘍がないのに胃が痛む、不快感が続く−−。そうした機能性胃腸症(functional dyspepsiaまたはnon-ulcer dyspepsia;NUD)患者の一部に、三環系抗うつ薬が奏効することがわかった。制酸薬や消化管運動改善薬が無効だったNUD患者11人のうち、9人で症状の改善が認められたという。症例数としては少ないが、難治性のNUDに対する抗うつ薬の効果を検討する第一歩となりそうだ。研究結果は、1月26日に行われたシンポジウム2「消化器心身症の薬物治療」で、秋田大学第一内科講師の大高道郎氏が発表した。

 NUDは、潰瘍などの病変がないのに、心窩部の痛みや不快感、食欲不振などの上腹部愁訴が続く病態。あくまで症状に基づく分類であり、「投薬などの根拠となる所見がないため、治療方針を決める際に苦慮することが多い」と大高氏は言う。一般には生活指導に加え、制酸薬と粘膜保護薬が処方されることが多いが、大高氏らの経験ではNUD患者全体の35%でしか症状の改善が得られていなかった。

 そこで大高氏らは、「生活指導+制酸薬、粘膜保護薬」という第一段階の治療に反応しなかったNUD患者を対象に、第二段階の治療として消化管運動改善薬のクエン酸モサプリド(商品名:ガスモチン)を追加投与。それでも改善がみられなかった患者のうち、同意の得られた人に対し、第三段階の治療として三環系抗うつ薬の塩酸アミトリプチリン(商品名:トリプタノール、ラントロンなど)を追加投与して、症状が改善される患者の割合を調べた。

 その結果、クエン酸モサプリドの追加投与で、第一段階の治療に反応しなかったNUD患者の62%(NUD患者全体の40%)で症状が改善。さらに、第一、第二段階の治療が無効だった患者(全体の25%)のうち、抗うつ薬投与に同意が得られた11人に塩酸アミトリプチリンを1日30mg投与したところ、うち9人(81%)で症状の改善が認められた。残りの二人についても症状は不変で、症状が悪化したケースはなかった。

 次に大高氏らは、NUD患者を「潰瘍型」(空腹時に痛みが出るなど、胃潰瘍と類似した症状を示す)、「運動不全型」(胃もたれや不快感などの症状を示す)と「非特異型」に分け、病型別に抗うつ薬への反応性を解析した。すると、潰瘍型の二人、運動不全型の3人では全員で症状が改善したのに対し、非特異型の6人では4人にしか有効性が認められないことがわかった。なお、効果に対する性差はみられなかった。

 この結果について大高氏は、症例数が少なく対照薬も設定されていない、非常に限定された条件下のデータである点を認めつつ、「NUD患者全体の25%を占める、制酸薬も消化管運動改善薬も効かない患者に打つ“次の一手”として、三環系抗うつ薬の有用性が示唆された意義は大きい」と強調。難治性NUDに対しては、消化管心身症という観点からのアプローチも、今後は重視すべきだと述べた。

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