2001.12.14

【日本免疫学会速報】 骨髄移植で免疫寛容を誘導、移植肢が1年以上免疫抑制薬なしで生着

 関西医科大学病理学第1講座教授の池原進氏らの研究グループは、ドナー(臓器を提供する側)の移植片を、レシピエント(臓器提供を受ける側)の免疫系が異物とみなさなくなる、「免疫寛容」(トレランス)という状態を誘導する新しい方法を開発。免疫寛容状態にしたラットに、別のラットの下肢を移植すると、免疫抑制薬を使わなくても1年以上生着することを確認した。研究結果は、同研究グループの重栖(えすみ)孝氏らが、12月13日のワークショップ18「リンパ球の選択とトレランス」で報告した。

 研究グループが確立した免疫寛容誘導法は、骨髄内骨髄移植(IBM-BMT)と呼ばれる方法。ドナーの骨髄細胞を、レシピエントの骨髄内に直接導入して、レシピエントのリンパ球系をドナー由来のものに完全に置き換えるというものだ。生着したドナー由来の骨髄細胞は、ドナーが「自己」であるとの記憶を残したまま、レシピエントの胸腺でレシピエントも「自己」であるとの教育を受ける。そのため、レシピエントとドナーの両方を、異物とはみなさなくなる仕組みだ。

 重栖氏らは、まずレシピエントとなるラットの骨髄を、抗癌薬と放射線を使って強力に抑制。翌日、ドナーとなるラットの骨髄を移植し、同じ日にドナーラットから切り取った下肢をレシピエントラットに移植した。

 その結果、下肢は完全に生着し、免疫抑制薬を使わなくても拒絶反応は全く起こらないことがわかった。24週間後にレシピエントラットの骨髄細胞を調べると、レシピエント由来の細胞は残っておらず、ほぼ完全にドナー由来の骨髄細胞に置き換わったことが確認できた。移植から約1年が経過した現在も、ラットは元気に歩き回っており、「下肢で立つこともできる」(重栖氏)という。

 IBM-BMTの特徴は、免疫寛容を誘導するための処置を、移植の前日に集中して行うという点。これは、臨床応用を考えた場合「臓器提供者が現れたら、即座に免疫寛容を誘導できるプロトコールが必須」という池原氏の考えに基づくものだ。

 臓器移植を受けると、拒絶反応を抑えるために、原則として一生免疫抑制薬を服用しなくてはならない。こうした服薬の手間や、免疫抑制に伴う副作用を避ける意味でも、免疫寛容状態を誘導するメリットは大きい。研究グループは現在、サルなどを使ってIBM-BMT法の改良を進めており、安定した効果が安全に得られるプロトコールの開発を進めている。

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