2001.12.13

【日本免疫学会速報】 悪性骨軟部腫瘍に対するペプチドワクチン、来年度にも臨床入り

 悪性骨軟部腫瘍では、白血病や悪性リンパ腫でみられるような染色体転座が起こっていることが知られている。この染色体転座で形成される融合遺伝子を標的にしたペプチドワクチンの臨床試験が、2002年度にもスタートすることがわかった。厚生労働省・がん研究助成金計画研究の「高悪性軟部肉腫の診断と治療の確立に関する研究」(主任研究者:国立がんセンター中央病院の梅田透氏)で、札幌医科大学整形外科・第一病理の研究グループが中心となって研究を進めてきたもの。現時点までの研究成果が、12月12日のポスターセッションで発表された。

 近年の研究で、ユーイング肉腫や滑膜肉腫などの悪性骨軟部腫瘍に、それまで白血病などの造血器腫瘍に特徴的とされていた染色体転座が起こっていることが判明。10年前にユーイング肉腫にみられる融合遺伝子が単離されたのを皮切りに、以後様々な悪性骨軟部腫瘍に特異的な融合遺伝子が同定されてきた。

 こうした骨軟部腫瘍の一つ、滑膜肉腫では、第18番染色体とX染色体との間で転座が起こり、SYT-SSXと呼ばれる融合遺伝子が形成される。この融合遺伝子は正常細胞には存在しないため、札幌医科大学の研究グループは、SYT-SSXをターゲットとする分子標的治療の開発に着手した。

 昨年度までに、SYT-SSX由来ペプチドで免疫すると、滑膜肉腫患者の末梢血に、滑膜肉腫を特異的に傷害する細胞傷害性T細胞(CTL)が誘導できることを確認。今年度は、このCTLの前駆体が、滑膜肉腫患者に存在するかどうかについて検討を進めた。

 その結果、滑膜肉腫患者では、末梢血中にSYT-SSX由来ペプチドに特異的なCTL前駆体が既に存在することが判明。SYT-SSXの遺伝子産物を、滑膜肉腫患者では既に免疫系が認識しており、SYT-SSX由来ペプチドワクチンを投与してやれば、すぐに免疫活性が高まる可能性が高いことが示唆された。一方、健常者や滑膜肉腫以外の悪性骨軟部腫瘍患者では、こうしたCTL前駆体は認められず、SYT-SSX由来ペプチドの滑膜肉腫に対する特異性が高いこともわかったという。

 滑膜肉腫は、関節の滑膜被覆細胞に発生する、比較的まれな癌。早期発見された場合は外科治療が第一選択だが、しばしば再発がみられ、厚生労働省研究班による化学療法の臨床試験が進められている。札幌医科大学の倫理委員会は、SYT-SSX由来ペプチドを用いたペプチドワクチンの臨床試験を既に承認しており、来年度にも患者への投与が開始される予定だ。

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