2001.12.13

【日本免疫学会速報】 抗アポトーシス分子サバイビン、癌免疫療法の有力な標的分子に

 札幌医科大学第一病理助教授の鳥越俊彦氏らは、抗アポトーシス分子のサバイビン由来のペプチドが、細胞傷害性T細胞(CTL)を誘導し、このCTLがサバイビン遺伝子を発現する癌細胞を傷害することを確認した。サバイビンが癌の免疫療法において、有力な標的分子となる可能性を示す結果だ。鳥越氏らはこの研究結果を、12月12日のワークショップ11「腫瘍免疫」で報告した。

 サバイビンは、アポトーシス阻害分子(Inhibitor of Apoptosis;IAP)ファミリーに所属する分子。カスパーゼを抑制することで細胞のアポトーシスを阻害する作用があり、胎生期の細胞に強い発現がみられるが、成人細胞では精巣や胸腺など一部の臓器にしか発現が認められない。

 近年、このサバイビンが腎臓癌や大腸癌、乳癌など各種の癌細胞では大量に認められることが判明。癌細胞にサバイビン遺伝子が大量発現している患者は予後が悪く、癌患者の血中に抗サバイビン抗体や、同じIAPファミリーに所属し癌特異的に発現しているリビンに対する抗体が産生していることもわかった。さらに、癌細胞のサバイビン遺伝子の発現をアンチセンスで抑えると、それだけで癌細胞が死滅(アポトーシス)することが確認され、癌細胞の生存に必須と考えられるサバイビンに、免疫療法の標的としての期待が集まっていた。

 鳥越氏らはまず、各種の癌細胞株や成人の正常組織でサバイビン遺伝子がどの程度発現しているかを検討した。すると、癌細胞では大量発現がみられるのに対し、正常組織では胸腺以外はほとんど発現がみられず、癌に対する特異性が高いことがわかった。

 次に鳥越氏らは、抗原提示を担う主要組織適合分子(MHC)であるヒト白血球抗原(HLA)多型のうち、日本人に最も多いHLA-A24に結合し得るサバイビン由来ペプチド3種類を合成。HLA-A24を持つ癌患者5人にこのペプチドを免疫し、CTLが誘導されるかどうかを調べた。

 その結果、3種類のペプチドのうち1種類でCTLが誘導され、HLA-A24とサバイビンを発現している腺癌や悪性黒色腫の細胞株を傷害することがわかった。同様の結果はIAPのリビンについて行った実験でも得られた。

 以上から鳥越氏らは、「サバイビンやリビンなどのIAPファミリー分子は、腫瘍特異的な免疫療法の標的分子になり得る」と結論。鳥越氏らは、ヒトのHLA-A24を発現するマウスを用いた動物実験を進める一方、学内の倫理委員会にサバイビンやリビン由来のペプチドワクチンの臨床試験を申請しており、早ければ2002年度にも乳癌患者などに対するペプチドワクチンの投与を開始したいと話した。

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