2001.12.03

【日本臨床リウマチ学会速報】 MTXの投与量8mg/週の上限に異論続出、「3分の2の患者には10mg以上必要」との指摘も

 慢性関節リウマチ(RA)に対するメトトレキサート(MTX)療法が、わが国で保険適用になったのは1999年だが、適用外使用の期間を含めると使用経験は10年近くに及ぶ。しかし、MTXが医療保険上でRAの治療法として正式に認められた反面、適応や用量の制限などが臨床の現状に合わず、かえって適切な治療を妨げているとの不満がリウマチ医の間に広がっている。第16回日本臨床リウマチ学会のスポンサードワークショップ「MTXの使用法」(共催:日本ワイスレダリー)では、週8mgという用量の上限に対する異論が続出、フロアも交え熱心な討論が行われた。

 聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科の鈴木康夫氏は、活動性RAを抑えるのに必要なMTXの投与量がどの程度かを確認する臨床研究の結果を報告した。対象は活動性RA患者60人で、まず、MTX5.0〜7.5mg/週から投与を開始し、C反応性蛋白(CRP)が2mg/dl未満になることを目標に、最大15mg/週まで増量した。

 その結果、MTX投与を1年以上継続でき、CRPが2mg/dl未満になった患者は55人(91.7%)で、これらの患者では、疼痛関節数、腫脹関節数とも有意な改善を示した。また、MTXの投与量は5.0〜15.0mg/週と幅があったが、55人中37人(67.3%)が10mg/週以上だった。なお、効果不十分で他の疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)の追加あるいは切り替えを行った患者は3人、副作用で中止した患者は二人だった。

 これらから鈴木氏は、「MTX投与によって改善を得た症例の3分の2は10mg/週以上の投与が必要であり、現在保険で規定されている最大投与量の8mg/週では不十分だ」と結論付けた。

 また、千葉大学第二内科の縄田泰史氏は、同大附属病院に通院するRA患者100人のうち、MTXを服用している59人について、投与量と効果を検討した結果を報告した。MTXが有効と判定されたのは46人(78.9%)で、平均投与量は5.7mg/週であり、6割が4〜5mg/週以下の投与量で有効となった。しかし、無効と判定された患者の半数以上は保険の制限で8mg/週以上に増量できなかったもので、縄田氏は「もっと増量できれば有効になった可能性がある」と、用量の上限に疑問を投げかけた。

MTXの投与量に内科と整形外科で違い、平均値・上限共に内科医で高い傾向

 一方、東京女子医科大学膠原病リウマチ痛風センターの寺井千尋氏は、「MTX投与量の上限が8mg/週に抑えられている点は問題」とした上で、「医師によって投与量に大きな差があり、それも十分な量のMTXが用いられていない一因」と指摘した。これは同センターが行っている大規模RA患者調査「J-ARAMIS」の第1回調査のうち、MTXについて分析した結果によるもの。対象は3815人のRA患者で、調査時点でのMTX使用例は1197人だった。

 J-ARAMIS調査によると、患者一人当たりのMTX投与量は、内科が5.6mg/週、整形外科が4.4mg/週と、診療科によって差があった。投与量の中央値は内科、整形外科とも4mg/週だが、内科では6.0、8.0mg/週というケースも多く、10mg/週以上投与する例もあるなどばらつきが大きかった。

 医師一人ひとりについてみると、8mg/週を超えて投与する医師は内科で4分の3を占め、10mg/週以上も25%を占めた。一方、整形外科では8mg/週を超えて投与する医師は2割強に過ぎなかった。

 次に、MTXの投与量が10mg/週以上の患者(79人)と、8mg/週以下の患者(1119人)の検査データを比較したところ、肝機能や白血球数、ヘモグロビン(Hb)値には差がなかったが、赤沈値とCRPは10mg/週以上の群で低い傾向を示した。そこで、MTX投与量とCRPとの関係を調べたところ、有意な負の相関が認められた。一方、副作用の発生頻度は、投与量が5mg/週以上になると、用量とは無関係であることも判明。寺井氏は、「投与量の不十分なケースに対し増量することで、有効な症例が増える可能性がある」と結んだ。

 MTXの効果の発現は、用量依存的に高くなることが知られている。8mg/週以下の投与量で症状改善が得られる患者も多いが、患者によって有効投与量が大きく異なることも事実。8mg/週という世界的な常識から離れた低用量の“しばり”に対し、用法用量の変更を求める動きが今後強まりそうだ。(坂本正、日経メディカル開発)

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