2001.12.03

【日本臨床リウマチ学会速報】 骨破壊進行抑制を目指した新RA治療薬、2002年秋以降にも続々登場

 慢性関節リウマチ(RA)の治療目的は、患者の生活の質(QOL)を左右する骨・関節破壊の進行抑制。この目的を実現する薬として、従来の抗リウマチ薬とは作用機序の異なる新薬への期待が高まっている。第16回日本臨床リウマチ学会のスポンサードワークショップ「リウマチ性疾患に対する新規治療薬」(共催:アベンティス ファーマ)では、サイトカインや酵素を標的とする薬剤のうち、2002年秋以降にわが国で発売が見込まれる薬剤の概要が解説された。

 聖マリアンナ医科大学リウマチ・膠原病・アレルギー内科の鈴木康夫氏は、既に欧米で使用されている疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)のレフルノミド(LEF)について概説した。

 LEFは、従来の免疫調整薬や免疫抑制薬とは異なる化学構造を持つ抗リウマチ薬。活性化T細胞のピリミジンヌクレオチドのde novo合成を阻害、G1期で細胞周期を停止させることが、主な抗リウマチ作用と考えられている。特徴は、1.血漿半減期が15〜18日と長い、2.血漿蛋白との結合率が非常に高い、3.腸肝循環がある−−など。わが国では臨床試験が終了し、2002年秋に発売が見込まれている。

 米国におけるメトトレキサート(MTX)との1年間の比較試験では、投与開始後1カ月で40%近くの患者に効果が現れており、MTXの25%弱を上回る早期の効果発現が確認されている。骨破壊の進行の指標であるSharpスコアでは、MTXに比べ有意に高い抑制効果があり、MHAQ、HAQなどQOLの指標もMTXより有意な改善を示した。さらに2年間の追跡結果でも、脱落例が少なく、治療効果が持続したという。鈴木氏は、「LEFは効果発現が早く、患者のQOL改善や骨破壊進行抑制の効果に優れた、期待できる薬剤だ」と語った。

TNFα抑制薬の臨床経験も紹介、感染症の増加と価格が課題に

 一方、腫瘍壊死因子(TNF)αの抑制薬については、抗TNFα抗体のインフリキシマブと、TNFαの抑制作用を持つ生物製剤のエタネルセプトについて、二人の演者から欧米での臨床試験成績やわが国での臨床経験が紹介された。いずれも欧米では既に市販されており、わが国でも臨床試験が進められている薬剤だ。

 埼玉医科大学総合医療センター第二内科の天野宏一氏は、キメラ型抗TNFα抗体のインフリキシマブについて、効果と問題点を解説した。天野氏はまず、日本人の2症例の臨床経過を提示。「いずれの症例も投与後1週間で、炎症マーカーのC反応性蛋白(CRP)、疼痛関節数、腫脹関節数とも劇的な改善を示した」とその効果を強調した。

 しかし、1回の投与では4週後に症状は元に戻り、8週後には再燃することも確認された。ちなみに欧米では、4週あるいは8週おきの投与が原則となっている。また、一部にマウス蛋白を含むために中和抗体が産生され、効果が減弱するケースもあることから、MTXとの併用で中和抗体の産生を抑える治療法が標準的だという。

 欧米では、インフリキシマブとMTXとの併用効果を調べたATTRACT(Anti-TNF Trial in RA with Concomitant Therapy)という大規模臨床試験が行われている。これは、MTXを3カ月以上投与しても効果不十分なRA患者約420人を対象に、MTXに追加してインフリキシマブを体重1kg当たり3mgまたは10mgを4週あるいは8週ごとに投与する4群と、MTX単独群(プラセボ追加投与)の合わせて5群に分け、その効果を比較したもの。

 ATTRACT試験からは、インフリキシマブを投与した4群はいずれも、米国リウマチ学会(ACR)の評価スコアで50%の改善(ACR50)が3割前後に達し、70%の改善(ACR70)という厳しい基準でも8〜18%が有効となることがわかった。また、骨破壊の進行抑制効果も、インフリキシマブを投与したいずれの群でも認められた。

 しかし天野氏は、長期的な問題点として、感染症、中でも結核の発症数が増加することを指摘。「もともと結核患者数が人口10万人当たり34人と米国より5倍も多いわが国では、特に注意が必要。インフリキシマブは、従来のDMARDが無効で、MTXも無効の症例に、最後に試みる治療法」と慎重な投与を強調した。

 TNFα受容体のp25部分とヒトの免疫グロブリンのFc部分とを結合させ、TNFαの作用を抑制する生物製剤のエタネルセプトに関しては、聖マリアンナ医科大学難病治療研究センターの川合眞一氏が解説を行った。

 米国での臨床試験では、用量依存的に疼痛関節数が改善し、中止すると効果がなくなること、ACR20やACR50の比率もやはり用量依存的であることなどの成績が報告された。また、MTXとの併用により、ACR20、ACR50、ACR70はいずれも、MTX単独投与の場合に比べ有意に高いこともわかった。また、わが国と欧米で行われたエタネルセプトの臨床試験結果の比較から、欧米人と日本人とで同薬効果はほとんど一致していること、薬剤への反応の個体差が大きいがこれも民族間で差がないことなどが確認されたという。

 しかし、「骨破壊については、MTX単独投与より有意に進行を抑制するものの、ゼロに抑えることはできない。また、結核の感染が増えること、コストが非常に高いことが、臨床応用の際には問題になるだろう」と川合氏は指摘した。こうした効果と副作用、効果とコストのバランスの問題は、これら期待の新薬についても緻密に論議される必要があろう。(坂本正、日経メディカル開発)

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